箱雑記ブログ

色々まとめています

YOSHIMOTO DIRECTOR'S 100

河内家菊水丸監督作品『田中徳三監督 少年河内音頭取り物語』
POISON GIRL BAND監督作品『ハチノス』
見てきました。以下ネタバレも少しだけしているちょっとした感想。



河内家菊水丸さんの映画、タイトルに別の監督さんのお名前があるので、どういうことかな?と思って見てみたらそういうことですか。
菊水丸さんご自身の幼少時代から、音頭取りを目指す少年の姿を描いた映画なのですが、これがもうすごくすごく良いお話でした。
もともと親子ものに弱いというのがあるのですが、私の知らない大阪の文化、さらには音頭取りというなじみのない職人芸に触れる新鮮さとかもひっくるめて、古き良き時代の雰囲気とか名残がとても心地よいです。昔の人情ってよかったんだろうなあーと素直に思ったりするのも嬉しい。
あとは、お母さんの表情ひとつひとつにたまらなく揺さぶられたり。田中好子さんが素晴らしく涼やかで、且ついろんな葛藤を抱えながら子供に接していく様があれもこれもとても素敵。すごくきれいな方なのに、浮世離れしたところがなくて、ものすごく時代背景と状況にあっていて、思わずため息です。父親・師匠など、少年を取り巻く大人のおじさんたちが誰も彼も個性たっぷりで味があってあたたかくて、それもまたいい。
田中徳三監督が菊水丸さんの幼少時代を映画化、という部分がとてもいいのはもちろんなのですが、この映画そのものの終わり方とかも、私は大好きだったなあ。天下一品のラーメンを食べたくなりました。


そんな、文化だとか歴史だとか親子愛だとかのいろんなものに暖かく触れた映画を見たあとで、『ハチノス』ですよ。もうびっくりですよ。この抱き合わせ作品のふり幅、過去一番の振り切れっぷりではないですか。もっとこう、間をとった作品を抱き合わせることは出来なかったのか(笑)
『ハチノス』の感想をひとことで言うならば、荒唐無稽、かつ意味不明(笑)私は誰かに「ぜひ見て!」と薦める勇気はないのですが、個人的には後に引くほど妙にツボにはまってしまって、どうやら無性にお気に入りのようです。我ながらどうかしてる。
基本的によく分からないことがよく分からないまま終わってしまい、さらに終盤本当によく分からない展開になって終わるため、全部見終わっても結局よく分からないのです。そしてフォローも何もない(笑)
この意味の分からなさがとにかく凄くて、例えば「ラストに衝撃の展開をおいておきたくてこういう風にしたんだな」というような理由すら、何か違うような気がするほど、とにかく分からないのです。色々と理由をつけようとするんですが、あまりにも展開が破天荒過ぎてどれもしっくりこない(笑)
ハチノスがあれってなった理由も分からないし、蝶って何のことだったのと思うし、そもそもアノコって何者でどういう理由でついてきててなんでそのことを誰も追及しないの!とその点が一番意味不明でした個人的に(笑)
ここまで分からないことばかりだと、どうやらもやもや通り越して可笑しくなってくるようで、無限大ホールを出てからしばらく映画のこと考えてたら、どうにも楽しくてしょうがない気分になってしまいました。行間を読むとかそういう問題じゃなくなってくる(笑)
考えてみれば、なんともポイズンらしいという気もする。監督と脚本の組み合わせって、やっぱりそういうタイプみたいなのも考えられているのでしょうか。あるいはポイズンだからこういうお話で書きました、とか。どうなのかな。
最終的に、異様に癖になってしまった、というところです。
ただし、「面白かったから見てみて」とはなかなか言えない(笑)


駅伝チーム側のシーンは全体的にすごく「風が強く吹いている」テイストだなーとなんとなく思って見てました。キャプテンがアンカーで足壊してるところとか。基本的にベタだしあくまでなんとなく、であって、そもそも内容とかは全然違うのですが。それにしてもあれはやっぱり大学生のイメージなのでしょうか。だとしたら新井さんは何回生なのか(笑)何気に坂本さんが美味しく仕上がっているのが素敵。
オカマ側のシーンは、全員オカマ(+ゲイ)が似合いすぎ。福島さんの仕草や表情の細やかな可愛らしさは一見の価値あり、かもしれません。あの上目遣いとか、すごいな!Qちゃんは違和感がないのが今思うと不思議(笑)おやきくんもあのビジュアルがオカマのママとなると格段にリアリティを帯びてくるのが魔法のようです。
吉田さんは、オカマというには品がありすぎる格好と雰囲気(笑)衣装がお嬢さんな感じだったからでしょうか。吉村さんがオカマ役でなかったことがちょっとだけ残念な気もしましたが、オカマの中にゲイが一人というシチュエーションも考えてみるとすごいような気がするのでいいのかもしれない。


そんな感じです。何しろ分からないことの多い映画なので、考える余地がありすぎるのも困りもの。おかげでこの長さ。
一周回ってもう一回見たい気になったのはなぜだろうと我ながら不思議でしょうがないです。