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しずる単独ライブ『日常と爆弾なんてさして変わりはしない』

owarai

年に1度のお楽しみ、しずるの単独ライブを見てきました。
以下感想です。ネタバレは極力控えていますが、タイトルの記載やコントに対する具体的な感想がありますので、お嫌な方はご注意ください。

・オープニングコント
・思春期
・シチャクシツ
・ノリノリ
・米国人
・警察署屋上
・出逢うべく二人
・ファミリー

変な思い入れやら何やらで冷静に見られないナンバーワンのしずる単独なんですけど、そうやって見たところで結局面白いものは面白いので、こんなにありがたいことはないなあと思います。

今回の単独での大きな印象のひとつは、よくぞこれだけの時間や労力や台詞量を駆使してこんなばかばかしいことをやってるな！というものです。むしろこれに尽きるかもしれない。台詞にしろ展開にしろそもそもの世界観にしろ、無駄なことがたくさん詰め込まれていた印象です。その無駄は、たまに間延びのように思える時もあったけれど、結局のところ「このボケのために、ここまでやるの！？」というたまらない馬鹿馬鹿しさにつながるものだったのかな、と。『シチャクシツ』しかり、『警察署屋上』しかり。
設定そのものの行き過ぎたディテールだとか、作りこみ過ぎたキャラクターだとか、とにかく何に関しても「○○過ぎる」ことが多くて可笑しかったです。しずるって元々そういうことをやり過ぎるのが好きな（得意な？）人たちだという印象がありますけど、今回の単独は特に！過ぎていたな！と。

なので、脚本そのもので笑うというよりは、作りこまれたキャラクターや台詞の数々と、それらを駆使するしずる二人の力量でもって笑いをかっさらうコントが多かったように思います。そんな演者の力技でも笑いが取れるんだから、しずる二人が持ってる舞台スキルは恐ろしいな、と、これも単独のたびに思うことですが今回は特に感じるところでした。

池田さんなんてもう、手のつけられないパフォーマンスぶりでひたすら素晴らしかったです。『思春期』での派手ではないのにころころと変わる感情と表情のあれやこれやにずっと惚れ惚れしてしまう仕上がり。あと、今回の池田さんが特にすごいと思ったのは、いわゆる現実味のない漫画的な設定に沿った台詞でも違和感なく客席に聞かせてくれた説得力です。『ファミリー』での一連はそれの最たるものだったなーと。あんな特殊なキャラクターを説得力持って見せられるって、どうかしてる！

『警察署屋上』と『出逢うべく二人』が、今回はずば抜けて好きでした。もう、よくぞこんなコントを生み出してくれたな！と駆け出したくなる面白さ。
『警察署屋上』の面白さは、とても渋く現実的な設定を村上さんの冒頭の振る舞いでさらにきっちりと作りこんでおいての池田さん登場の瞬間の衝撃だとか、あのどうやってもありえない池田さんが全てにおいて大袈裟に振舞わないことで伝わってくる歪な日常ぶりだとか、そんな異常な諸々のせいでものすごくいい会話が全編通して繰り広げられているのにどうでもよくなる感じだとか、ひっくるめて最高だな！となります。二人の関係性も、会話も、ものすごくちゃんと作りこまれてるのに、池田さんのやってることで全部無駄になる、むしろ無駄になって初めてコントが成立するんじゃないかという。ぶっ壊されるために作られる台詞と世界観をあんな風に引っさげてくるんだから、しずるって本当に面白いです。
『出逢うべく二人』はまた全然違ったタイプのコントで、コントのほとんどの時間を使って丁寧に美しく振って振って振って振りまくっておいて、きれいにパーツを並べて整えたちゃぶ台を最後でよいしょー！ってひっくり返すという、これまた別種の力技。あんなの大好きです。ばかすぎる。一点突破の力技ではあるけど、盛大にひっくり返した後のやり取りが全部面白いのも憎たらしい。よく覚えてないんですけど、1日目と2日目でオチが違ったような。で、2日目のオチがいやらしくてより好きでした。見てる側の先入観を利用しまくってから蹴っ飛ばす爽快感が本当に面白いです。

あと、色々と無駄をつくってやり過ぎるコントが多い中で、『思春期』は今までのしずるがよく見せてくれたような、地に足のついた日常の中で二人のやり取りの妙と共に話が動いていくコントで、そういう意味では他のコントとちょっと毛色が違ったせいかとても映えて見えた記憶があります。なのですごく自分の中で楽しかった印象が強くて、もともと好きなタイプのコントだったから余計に面白かったです。オチ手前とオチが楽しすぎる。

VTRはとてもシンプルに、二人のオフショット的な映像が流れるものに。少し前にチョコレートプラネットのライブにゲストで出ていた際に、村上さんが「単独はコントを見てもらうことが一番大事だから、VTRはシンプルでいい」というようなこと（意訳です）を言っていたので、なるほどなと思ったことをメモしておきます。VTRで大笑いするのも好きですけど、それよりコントを見てほしいんだよ、という芸人さん側の心意気は勿論素敵です。

やりたいことを素直に詰め込んだ単独ライブだったのかな、と思いました。単独ライブのコント群としてはひょっとしたら決してバランスが良い単独とは言えなかったのかもですけど、それもやりたいことをやりきる精神の表れなのかと思うと、なるほどなと思える気がします。
単独で見るしずるのコントは、単独から先に進むにつれてどんどんそぎ落とされて仕上がっていくのが毎年のことなので、大阪単独はもっといいものが見られるんだろうな、とか、他のライブで単品で切り出されていくコントはファン以外の人の目にはどんな風に映っていくのかな、とか、公演が終わってもなお興味は尽きません。