箱雑記ブログ

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春風亭昇太「城あるきのススメ」出版記念落語会

地震でいろんな場面が大変な時期で、公演を自粛する動きが多い中、開催された昇太さん中心の「お侍落語&大講演会」と銘打たれた落語会。昇太さんのお城のエッセイ本が出版されるということで、その記念の会です。幸運にも行くことが出来ましたので、私は元気でやってますという報告に代わり、落語ド素人初心者が本当につたないですが簡単にメモを残そうと思います。落語のこととかぜんぜんちゃんと語れない上に後半の講演会のところだけやたらと詳細だったりするのでごめんなさい。
昇太さん曰く、この混乱のさなかにあえてこの会が開催された理由は「中止の連絡手段が無かったから」。もう本当に色々とたまらない。




春風亭柳好禁酒番屋
春風亭昇太:宿屋の仇討
立川志の輔八五郎出世せず
〜仲入り〜
大講演会

基本的にお侍さんの出てくる噺もしくはお城が出てくる噺、というしばりがあったそうで。
こんなさなかで当日呼び出されたという柳好さんの噺は知らないものだったので嬉しい。昇太さん曰く「ふにゃふにゃになれる」という柳好さんの落語は、確かに大きな声を張り上げてもどこか牧歌的で、いい意味での「ふにゃふにゃ」をありがたく体感。
昇太さんの宿屋の仇討は初めて見ましたが、全体を通してなんとも軽くて明るくて、デフォルメ具合が突き抜けてていっそ可愛らしいくらい。侍のキャラが威厳よりも健気さを感じるあたりが抜群に昇太さんだ!と思えて本当に楽しいです。侍は妙に可愛く、江戸者三人は憎めないおばかぶりで、どのシーンでも緊張感なんてどこにもない(笑)徹底して明るく楽しい噺になってしまうのがつくづく面白いです。
志の輔さんはとても久しぶりに生の高座を拝見しました。妾馬=八五郎出世、の志の輔さん版ということのようです。たっぷり時間をかけて、じっくり見せてもらって、緊張と緩和でたくさん笑って、ちょっとじーんとして。志の輔さんの笑いのつくり方というかその間というかすかし方というかが、改めて見てみるととても現代的だな、となんとなく感じる瞬間が何度かありました。万人が面白く思えてかゆいところに手が届く感じがちょっとだけサンドさんぽい、というのは思いつきですが。


そういえば、まくらで志の輔さんが、この会の中止の連絡をずっと待っていたのに一向に連絡が来なかったという話を。前日だか当日だかに昇太さんに電話をしたら、「お城の噺をやってくれればいいから。じゃ」で電話を切られた、と憤慨(笑)
「そもそもこの会をやったら、と言ったのは私」「本の発売日に私のスケジュールがあいているからじゃあやろうかとなったはず」「なのに私のところにいつになっても本が届かない」「本当に本が出来ているのか心配になって昇ちゃん*1に電話した」「『本は出来てるの?』『出来てるよー』『出来てるの?じゃあ送ってよ!』『あ、そうなの?』そうなの?ってことがありますか!?」(笑)自分がお城に興味がないからだと思うし、だから私達はうまくいってるんですよ、という志の輔さん。なぜか無性に志の輔さんを応援したくなった私。
以下志の輔さんによる、自分が出てくる話が第1章に載っている、その1章の原稿を持って昇太さんは出版社にこういう内容を出したいと持っていったらしい、であればなおさら自分のところに本を届けるべきだ、等々の面白愚痴話が(笑)
最終的に、「私が何も協力していない花緑さんの本は3日前に届きましたよ!」って。昇太さんもさすがだけれど花緑さんもさすがです。面白いなあ落語家さん。


短い仲入り中には、先日発売された昇太さんのDVDの特典映像だという昇太さんお城探訪の映像が少しだけ流れてました。そんなものがついていたのか。買ったはいいけれど色々あって見られていなかったもので。50越えのおじさんが土塁を見つけてキャーキャーヒャーヒャーいいながらはしゃぐわ駆けるわ。昇太さんの高座を初めて見たときのファーストインパクト「この人ギャルみたい…」を改めて感じましたがそんな自分の感性については常日頃から心配しています。


で、大講演会。何をやったかというと、私服の志の輔さん柳好さんを相手に、白シャツにネクタイで上に緑ジャージ*2という学校教師スタイルで出てきた昇太さんが、ホワイトボードとスライドの写真でもってお城講義をかますという壮大なコントでありました。
昇太「出席を取ります。竹内くん!*3
志の輔「はい!」
昇太「平山くん!*4
柳好「はい!」
冒頭からこの調子。昇太さんのノリは以後も完璧、生徒役のお二人も適度に乗っかる。おじさんたち面白すぎ。
そして早い段階で志の輔さんに「やっぱりコント形式には無理があるんじゃないですか」と言われたにもかかわらず最後まで頑なに先生として生徒を指導する立場を崩さなかった昇太さん何なの(笑)


昇太さんの大好きな中世城郭の話から、日本人の一般的なお城イメージであるところの天守閣の話がむしろメインに。お客さんに合わせてくれたのかなーと思うのですが、微妙に皮肉要素を盛り込んでいるあたりがいかにも昇太さんらしい。「姫路城のまねしたかったんですかねー」とかもう(笑)
全部ひっくるめてとっても分かりやすい講義であったため、昇太さんのお城の講演会とか本当にあれば見てみたいなーと思ったものです。スライドに表示される天守閣を見ただけで○○城××城と言えるのは、お城マニア的には当たり前なのかもですが、お城をよく知らない私みたいなもんからしたら凄すぎる。
現存天守、復元天守、模擬天守などの単語も初めて知りました。建設された当時のままの天守閣って日本に12しかないんだとか。珍妙な模擬天守の話あたりはさすが芸人さんという目のつけどころ。アメトークでお城大好き芸人とかやればいいのになー面白そう。


合間合間に、志の輔さんの的確すぎる質問が入り、講義が進んでいく様がまた面白いんです。先生と生徒のチームワークの素晴らしい即興コント(笑)
ただ基本的に志の輔さんはお城ど素人ポジションなので、基本は先生を呆れさせる質問や発言が多いのがまた。
最初に写った土塁の写真を見た際の、
志の輔「懐かしい!」
昇太「竹内くん、これは君が見たやつじゃありません」
志の輔「ええー!」「どれ見てもお城なんて一緒だよ!」
というやり取りが面白すぎましたのでメモ。


そのくせ志の輔さんはご自分の後姿の写った写真を見ても無反応。
昇太「志の輔さんも写ってますが」
志の輔「これ俺!?」
頼りない自 衛 隊みたいな格好の志の輔さんがそこに(笑)ご自分のことが分からないとか天然ぶりがつくづく素敵。
お二人が一緒に見に行ったお城の話をされてまして、志の輔さんによると、昇太さんにあそこから敵が攻めてくるのをああしてあそこから撃退して…という説明してもらいながら土塁を見ていると、全部脳内に再生されるんだそうです。べた褒めです。
昇太「そんな喜んでた竹内くんの写真がこれ」
→昇太さんと志の輔さんのはしゃいだ写真がスライドに。志の輔さんが頭を抱えて照れる。おじさんたちが可愛すぎて見てるこっちが困ります。
ちなみに志の輔さんは富山出身なので、お城といえば富山城とのことですが、富山城は以前小林 薫さんに「すごいラブホテルだわー」と言われたという思い出も語ってらした(笑)


あとは印象的だったのは、志の輔さんが何か余計なことを言うと昇太さんが「ゲンコツー」と言いながら志の輔さんの頭をこつんとやる、というのが何度かあったことか。後半は昇太さんに志の輔さんがゲンコツーとやっていたのもありました。
50越えのおじさま方がこんなにキュートでいいんですかね。


最後はなぜか、大講演会の間も終始おとなしく、終わり際に「私は何のために呼ばれたんでしょう」とのたまう柳好さんのうどん芸*5の動画を見ながら終わり。「ここは10時には完全撤収なんで、さっさと帰ってください」と昇太さんに言われ、本当にさっさと終わる会(笑)
後輩のああいう動画を撮影してきゃっきゃしてるあたり、落語家さんて若手芸人さんとあんまり変わらないなーとつくづく思います。いや、落語家さんがというか昇太さんが、かもしれない(笑)


本当に面白かったです。ずっと楽しみにしていたのですが、これだけの人気公演が7割くらいのお客さんの数で、本当に大変な時なんだな、と。
ただ、公演中はもちろん地震の話も停電の話も出ますけど、湿っぽさや暗い空気が1秒たりとも感じられなかったです。徹底して明るく楽しいだけの会。会の間はひたすら楽しいだけで、全部終わって改めて、出ていた落語家さんたちみんな凄い、と溜息しか出ないという。
「中止にしなかったのは中止の告知をする場所がなかったから」「払い戻しの方法が分からなかったから」なんて言ってましたけど、本当だとしても冗談だとしても凄い。この肩の力の抜け方、気負わなさ加減がどれほどすごいか、見てる我々に何の後ろめたさも感じさせない重力ゼロの気安い楽しさがどれだけありがたいか、うまく言葉にするのは本当に難しいのですが、とにかく昇太さんをはじめとしたこの方々が本当に素敵で凄いということは感じました。あんなに楽しくてあったかい落語をほらよって見せてくれて、中身の詰まったお城講義コントまで見せてくれちゃうんです。
志の輔さんがまくらで、「あんな感じだけど昇ちゃんもああしようかこうしようかって悩んでたんですよ」というようなことをぽろっと言っていて、そういうことなんだと思いました。頭からっぽで何も考えてないように見せかけることのかっこよさもしびれるけど、本当は全部そういうわけでもないんだよと盟友の行動にそっとひとことだけ添えるかっこよさもたまりません。だからこそ大講演会でも全力で昇太さんの馬鹿馬鹿しいコントに乗っかっていく志の輔さんがこれまた素敵だったわけで。
だとしてもこんなこと言われるの本意じゃないんだろうなーとは思いますし、もしかしたら本当に何も考えてなかっただけなのかもしれませんけど(笑)、どちらでもいいのです、どちらでもかっこいいし、どちらでも私は本当に楽しかったので。お城の本出版記念の落語会である以上の特別なことは何も無かった、ということが何より凄いと思うのです。いつもどおり、何も変わらない、ただ楽しい。それがどんなに凄いことか。


いいものを見ることが出来た幸運に感謝しつつ、末端のド素人が感想などをつづってみました。


おまけ。

物販にて雄々しく立っていた昇太さんの雑兵マスコット。画像を小さくしてしまったのでよく見えないかもですが、お顔がご本人そっくりで素晴らしい。

*1:志の輔さんと昇太さんは同期でマブダチなので、お互いを昇ちゃんしのさんと呼び合っているそうな。

*2:SWA4の背番号付き

*3:志の輔さんの本名。

*4:柳好さんの本名。

*5:うどんの麺を口の外から中から自由自在に操る。