箱雑記ブログ

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東京シュール5 感想

池田一真とお正月、田所仁とお正月、どちらもまとめて感想を。どちらもばっちり面白かったです。




昼の池田さんプロデュースも田所さんプロデュースもすごく面白かったです。もうタイプが全然違う正反対のライブだったのが、逆によかったのかも。
私はどちらのライブも好きでした。多分私が池田さんも田所さんも好きだからだと思いますが。


池田さんのライブは、全体通してふわふわとした仕切りに足元の覚束無い展開で、ちょっと見ながら不安になるような感じで(笑)演舞と称して合間に挟まれる池田さんのやりきりコーナーも、9割が見ていてどうしたらいいのか分からないような中身(笑)
ただ、池田さん自身もそうですがライブ全体でも、たまに見られる力技がすごくて、しかもそれが予想もしない方向から予想もしないパワーで飛んでくるので、びっくりしながら大笑いする瞬間もたくさんありました。もうしょうがないよ笑っちゃうよ、みたいな(笑)
池田さんらしい歯に衣着せない暴言失言ギリギリアウトな発言の数々、たまに強気になったかと思えば次の瞬間弱気になって声小さくなったり、かと思えばおみくじに見られる独特の世界観(と言うと聞こえはいいですがつまりは世紀末な雰囲気)と言葉選び、等々、とにかくアップダウンが激しい!
このライブが駄目だと思う人もきっと居るんだろうと思い、しかもその気持ちも何となく分かってしまうような、そんな気もするのですが、そのアップダウンと何がおきるか分からないびっくり箱のような感じが、私には合ってたみたいです。真昼間に開始早々家城さんからキ○ガイという単語を引き出す手腕はダテじゃない、はず(笑)
とにかく予想が出来ない2時間だったので、身構えっぱなしで笑っていたためか、終わった後はなぜかぐったりしてました。笑い疲れたのでしょうが、何となくあまり経験したことのない笑い疲れ方をした気がします。
池田さんの奔放さとアップダウンに振り回される先輩各位のリアクションも面白かったなあ。犬の心に対する無実の罪を着せ放題な様子は相当笑いました。また押見さんが真っ向からそれを相手にしちゃうから可笑しくてしょうがなかった(笑)押見さんはある意味でまっすぐな人なのかもしれません。いじられる様が最近はいっそキュートに見えてきました。気のせいだろうか。
後は相方として居た堪れなさMAXだったに違いない村上さんの様子も(笑)少し前のケチャップナイトで、池田さんは村上さんに自分のことについて「これから苦労するよ」と言っていたのですが、これもその苦労のひとつに入るのだろうか。途中の池田さんの暴言に、無言のまま池田さんを止めようと向かっていく村上さんのリアルな様子が可笑しすぎました。
あとはやっぱりおみくじが!素晴らしい時間でした。覚書では全てを書き出すことは当然できなかったのですが、全部見てみたかったし全部覚えておきたかったくらい、全てのおみくじが秀逸でした(笑)絵に描いたように引きの悪い押見さんや、Tシャツのくだりが書かれたものを引く阿部さんのミラクルもひっくるめて。それにしても池田さんの言語センスはちょっと宇宙に近い感じがする。
その上で、あの「世にも奇妙な物語」的な終わり方ときて、たまりませんでした。池田さんはこう、何か尋常ならざるものを持っている気がします。それは才能とかそういうものじゃなくて、いやそういうものももちろんお持ちだと思うのですがそれ以上に、時の運とか、前世の因果とか、それ的なもの(笑)


田所さんはといえば、才能とか天賦とかの言葉で書いてしまうとちょっともったいないような、そんなものを今回も見せ付けてくれまして、可愛げがないわえげつないわで本当にもう!と悔しいほどでした。
以前の田所プロデュース公演では、田所さんの作り手としての凄みを見せ付けられたのですが、今回は、企画力というか、仕掛けを作る発想力というか、それにしてやられた気がしました。シュール5のメンバーという素材はそのまま生かして、彼らを大いに踊らせる舞台装置を作って踊る様を見せ付ける、という、トリッキーな作戦。しかもドキュメント。
あの最後の問題、「ひとりだけ答えを全部知っている人がいる」という要素は、よくぞそれを仕掛けることを思いついたなあ、というところです。今となっては、最初からこれありきだったのかな、と思わなくもない。これがやりたくての、その前のクイズのくだり。
それにしても先輩だろうと関係なしに阿鼻叫喚の渦中に軽々と放り込むんですから、本当にえげつないなあと思いました。合間の楽屋での私物破壊も含めて(笑)


この企画が面白かったのは、田所さんが作った大枠はもちろんなのですが、その中で踊らされるほかのメンバーのキャラクターが本当に個性的で、リアクションが多種多様だったのもあると思います。色々と新鮮だったなあ。
お笑いのライブで芸人さんがあんなふうに追い詰められる様というのは、多分なかなか見ることがないと思うし、それが見られたとしてもあんなふうに楽しんで興味深く笑うということはなかなか難しいのかもしれないので、そういう意味でも貴重な体験でした。シュール5という有象無象で何でもありな器が、田所さんが作り出す世界に合っているのかも。


騙されていたことに最初から怒りと失望をあらわにして、誰よりも余裕のなかった家城さん。あんなリアクションを取れる家城さんは、多分すごく性善説で生きる、心のきれいないいひとに違いない(笑)なんか、いい先輩だなあ、としみじみ思ってしまいました。
疑心暗鬼になって誰も信じられず、もう犯人はいないことにしよう等いろんなものを放棄して、最終的にはそれも出来ずに自分以外の全員を疑っておろおろしていた阿部さんは、むしろ誰かを疑うとか信じるとかそういう行為そのものから逃げ出してた印象(笑)阿部さんもきっとすごくいい人なんだろうなあ。
同じ疑心暗鬼でも、押見さんの場合は外側よりも内側にベクトルが向いていた印象です。周りに「誰が犯人だ」と問い詰めるより、「自分じゃない」ということを主張する場面の方がずっと多かったので。人を疑うより、人に疑われることに敏感だったということだろうか。やはりいい人です(笑)だから疑われるたびに疲弊していく様がまた可笑しかったなあ。
池谷さんは、清々しいほどいつもどおり(笑)ちょっとやそっとじゃ足元をすくわれそうにないあの強靭さは素晴らしいと思います。他の人に比べて揺らいでいた印象がほとんどないので。池谷さんの何があの強靭さを構成しているんだろうか。
吉田さんは、阿部さんや押見さんとは逆に、なんとしても犯人を見つけてやろうという心意気が見えていて、負けず嫌いということなのかな、と思ったりしました。案外穏やかに解決するという感じでなくて、強引でもいいから決着をつけてやる、という感じだったのがある意味頼もしい気が。最終的に犯人=池田さんを当てていたのは吉田さんだけだったのも、ちょっとすごい。だから池田さんが犯人だと分かってからも、一番余裕があった気がします。個人的には、何をもってして池田さんだと確信を得たのか、それを凄く知りたい。私はころっと騙されたクチなので。
村上さんは、もしかしたら池谷さんの次くらいに感情の振れ方が少なかったような印象です。最後の犯人探しの展開になってからは、輪からちょっと外れてじっと思案していたのが記憶に残ってます。騒ぐことはなくて、犯人と指摘されても、それを材料に「今のは逆に怪しい」みたいな感じで対応していて、感情的でなく思索的な動きでその場を乗り越えようとしていた気がします。理屈で納得しようとする様子も面白かったし、各人への分析がだいぶ正確でそれも興味深かったなあ。
関町さんは、ただただピュア(笑)すべてのリアクションが素直で、怒ったりするよりもおろおろしていた感じ。ただ、終盤にきてだいぶ追い詰められてきたときに、「うわああ」となって他のメンバーを衝動的に刺す、みたいなミニコントをやっていたのが面白すぎて、そっちの印象が一番強い(笑)余裕があるんだかないんだか。


で、結局は池田さんが犯人だったわけですが、考えてみるとこのチョイスも田所さんのえげつなさをあらわしてるのかなあと思います。後輩に先輩を騙させるという点もそうだし、気心の知れた同期を味方に引き込む安全策もそうだし。
途中で池田さんが犯人ではと吉田さんから指摘が入ったときに、村上さんが池田さんの裏をかいていく性質について話をしていたのですが、個人的には見ていてその「裏をかく」池田さんの言動にまんまと騙されたため、くそーと思いました。最初から答えを知っている人間が、1問目のクイズで答えを言う度胸というのが、我が身に置き換えるとあまりにも考えにくかったもので。よくぞそれをやりきってのけたなあ、池田さん。家城さんじゃないけど、「上手くやりすぎ」は本当に思いました。そして、その裏をかくという池田さんの性質を見抜いての抜擢だったとしたら、田所さんは鬼ですね!
犯人探しの間も、池田さんはでしゃばらずうまいこと気配を消していて、弄られればそれに難なく対応していて、本当に自然で…恐ろしい(笑)あの様子を見ていて北島マヤ(@ガラスの仮面)を思い出したのは私だけではないはず(笑)
池田さんが犯人犯人言われてて、まるで池田さんが全部悪いみたいになってましたけど、結局全ては田所先生の手のひらの上ですからね!自分が矢面に立たないということもひっくるめて、本当にえげつない企画です。


ちなみにクイズを解いているときも、各々のキャラクターが出てて面白かったです。
答えを知っていた池田さんだけは今となっては分かりませんが、出来そうに見えてただただ出来ない人だった(笑)押見さんを筆頭に、答えを解いていく人の手柄を全部横取りする阿部さん、能ある鷹がツメを隠す風を装いつつ基本はサボっている(でも実はやっぱり出来るっぽい)吉田さん、家捜し状態でセットを漁ってヒントを次々と見つけていく行動派の家城さん、頭脳労働は最初から放棄して別の役に立とうと潔く鍵あけ係として奮闘する池谷さん、ガチでクイズを見事に解いていく本物の頭脳派だった村上さん、マスコットキャラクターのようにみんなの中に溶け込んでいる関町さん(笑)
見所がありすぎて本当に楽しかった!そういえば阿部さんが池田さんの手柄(本当は答えを知っていたわけですが)を横からにこにこと奪って「俺と池田が解いたんだよな」みたいな笑いを取っていたのが、今となっては図らずも目くらましとなっていたのだなあと(笑)
推理もののお芝居みたいに、犯人が分かった状態であのライブをもう一度頭から見てみたいです。きっと発見が山ほどあるし、違うところで笑えるはず!田所さんだけはそれを楽しんでいたのかと思うと、なんて悔しい話だ(笑)


かたつむりも、随所でキャラクターをアピールして笑いをかっさらう林くんと、いじられるまで何も話さない空気のような中澤さんで、かたつむりらしさを存分に感じられた気がします(笑)


以上です。本当に面白かった!
例えばこれを、田所さんが自分の(ライスの)ライブでやったり、別の場所でやったりしたら、また全然違うことになったような気がします。東京シュール5という器だからこそ、成立するこの特異なドキュメントだったのかも。
とはいえ、田所先生のことだから、別の場面で同じことをやるなら、別の場面にあった別の形を用意してのけるんだと思いますが。つくづく可愛げがないなあ(笑)