箱雑記ブログ

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『赤めだか』(立川談春)

立川談春という人とその人の落語を初めて見るにあたり、とにかく何かしら予習をして望まねばもったいない!と思い、選んだのがこれでした。面白いという評判を耳にしていたのでいい機会だからと手にとってみたのですが、本当に面白かったです。
やはりあるジャンルを極めんとしているプロの方のドキュメントというものは本当にどんなものでも面白い。落語の世界というのは私にとっては完全に未知のもので、初歩的なエピソードですら新鮮。これを読むまでは、前座にはアルバイトが認められていないことも、立川一門が協会に属していないことも、まったく知らなかったです。どんだけ無知なのか。
そんな、いわゆる少数派閥の、しかし個性の強い立川一門の皆様が、とにかく生き生きと魅力的に描かれていて、書き手の対象への深い愛を感じずにはいられない。特にイエモトと呼ばれる談志師匠への敬愛たるや。そして本を通して伝えられる、談志師匠の言葉の数々はどれも尋常でない説得力を持っていて、唸ったりはっとなったりしっぱなしです。イエモトに限らず、みんな本当に個性的で、破天荒ながら情に厚い人達で痺れます。本を読んでいるだけで、この人達の落語を聴いてみたいなあと、私みたいなものはあっさり思ってしまうわけです。
落語の世界そのものへの興味も思い切りそそられます。私のような一般人にはとても非現実的な、前時代的な、けれどそれだけに不思議な魅力を持つ世界です。普通に考えたら不条理なことが、美しく律されてまかり通る世界。くっきりと切り取られた別世界だなあと。その世界を生き抜く噺家の皆さんの悲喜こもごもは強烈で眩しい。
面白かったです。立川一門のみなさま、個性的すぎる(笑)破天荒ばっかりが集まってくる感じ、いかにもやんちゃな噺家さんぽくていいなあ。

赤めだか

赤めだか