箱雑記ブログ

色々まとめています

カリカ単独ライブ『しゃべるコント』

1日目を見てきました。
博品館劇場は初めてでした。客席に入った途端、薄暗い舞台を横切る白い影を見つけて思わず釘付けになりました。浅はかな私が想像していたよりも、何か凄まじく重くて大きなものが始まる予感を唐突に感じて、心のギアを切り替えました。すごいものを受け止めるための心構えみたいなものです。
見終わった後出てきた言葉は「カリカは凄い」。自分の語彙の貧相さが嫌になるくらいに、膨大な情報量に翻弄された、密度の濃い2時間半でした。
カリカは、コントじゃないものではなくて、コントを超えたものを作ろうとしているのかなあ、というのは、MEETSが始まった頃から勝手に感じていたことなのですが、今回改めてそんな気分になりました。お芝居とかじゃないんですよね、どこまでもコント。ただし、コントはコントでも、脱コントではなくて、超コント。
そんな前段で予想されるとおり、以下はだいぶ気持ち悪い感想です。ネタバレ含みますのでご注意ください。




コントのタイトルはほぼ失念していますので、ニュアンスで以下書いていきます。ご存知の方がいらっしゃいましたらご指摘いただけると嬉しいです。


あまりにも情報量が多くて、得られる感情のふり幅が大きくて、濃度もすごくて、全部見終わったときにはちょっと頭の中が飽和状態でした。笑いだとか不条理だとか歓喜だとか悲哀だとか純愛だとかエロスだとか泥臭さだとか生死だとかを全部ひっくるめて内包している膨大さ。受け手としての自分の中に想起される感情や衝動の種類が尋常じゃないのです。それらが、下衆なものから粋なものまで様々な種類の笑いを常にまとった上で展開されていくのだからとんでもないなあと。単に「コント」という名称から受ける印象から比べたら、その情報量は桁外れだと思います。こんなに色々と脳が踊らされるコントを私は他にあまり知りません。次々と提供されるコントに翻弄されて、同時にどんどん前のめりにさせられて、気付いたら圧倒されてました。人間て圧倒されすぎると涙が出てくる生き物なんですね。何で泣けたのか未だに分からない(笑)カリカにあてられてとうとう頭がぶっ壊れたのかなーと真面目に考えたくらいに分からないです。
カリカのコントを見ていると、舞台設定にぞくぞくして、いろんな展開で目が回り、鮮烈な台詞の数々に打ち抜かれるということの繰り返しになります。例えばいろんなコントやキャラクターがそれぞれ伏線となって終盤につながっていくという構成そのものは、それほど真新しいものではないと思うのですが、それらがただつながっていくのではなくて、感情や業みたいなものをどこまでも引きずっていくのが凄い。つながったからといって綺麗に収束するとは限らなくて、逆にとんでもないものを引きずり出したり、見たくもないものが曝け出されたりする。優しいつながりも切ないつながりも面白おかしいつながりもあるけれど、それらがやたらと複雑に編みこまれてひとつの単独となってるのがまた凄い。


その最たるものが、ピザババアと真面目くん(名前を失念しました…)の存在ではないかなあと個人的には思ってます。笑いは当然として、その上に純愛とエロスと妄執があれだけ盛り込まれたコントって一体全体なんなのか。最初のピザババアのコントは本当に頭がおかしくて(褒めてます)、とにかくカリカらしい設定の深いコントだと思って大笑いしてたのですが、それがトラウマとなって大人になった真面目くんを苛んでいるというコントも笑える上にやたらと凄みがあったし、何より最後の着地点が!トラウマとタイムスリップと愛憎で彩られるコントって何だろう。
台詞がよすぎました。「心乱れて汚い行動をするのは下品。心安らかに美しい行動をするのは上品。」というあれです。「心安らかに汚い行動をするのは猥褻」というのも凄く分かって、なんとも淫靡なのですが、でもそれらはコントの中で笑いを作るフレーズというだけに留まらない。挙句最後のNo.1ボウヤのコントの中で、「心乱れて美しい行動をするのは、気高い」となる。自分に銃を向けて愛憎のままに葛藤するかつての少年相手に、ピザババアが汚らしく這いずりながら「気高い」と言う、そのワンシーンで、私はなんてものを目にしてるんだろうと思ったものです。ここに至るまでに、ピザババアの過去をコントで見てしまっているから、余計に色々なことが頭をめぐりました。コントなのに!たかがコントなのに、されどコントなのだと思い知らされました。
何度かコントじゃないものを見ている気分になって、でも間違いなくコントの端くれに違いないのです。もっと粗雑だけど、圧倒的なものが、カリカにおけるコントなのかなあ、なんてこれまた勝手な感想ですが。


ただ少年がピザを食べさせたがるババアに引っかかる、というだけだったらこんなに揺さぶられたりしないわけで、その真面目くんが両親との時間や誰かとの食卓に飢えていたからこそ、ピザババアがそもそも最初から実の兄を愛してしまうというインモラルな性質を備えていてさらに自分の手でその兄を死に追いやってしまったという過去があるからこその展開なのであって、この情報量をあえてコントという場に放り込む意欲が尋常じゃないなあと思います。それらが無かったら、這いずるババアも、ババアに拳銃を向ける真面目くんも、その真面目くんが葛藤する様も、あんなに刺さらない。そこには単純な笑いとして消化することが出来ないものが山ほど存在していて、こちらを圧倒して、その上でやっぱり驚かせたり笑わせたりしてくれる。それが凄い。


ゴローのくだりも面白かったなあ。AIが死んで、死ねずに物の怪になって、人間になるって、どんな進化だ。家城さんの頭の中は本当に何がどう入り組んでるのか全然見えません。凄いなあ。ズボンの人もよく分からない(笑)せっかく物の怪になれたのだからもう人間はやりたくないって、どういう精神状態なのか(笑)そういえばズボンに取り込まれちゃうっていうあれは本当に病気なのかなー。猫女みたいな人体実験の結果だったりはしませんかね。さすがに深読みしすぎでしょうか。
このあたりの入り組んだ因果関係は、1回見ただけだとうまく消化しきれなくて悔しいです。やっぱり2日間とも見たかった!


土の谷のあの人達は、ただひたすらに頭おかしくて面白すぎました。何だあのゆるい一族(笑)あのお笑いコンビのネタ面白すぎましたけど、やっぱりテレビはだめかー(笑)そして土の谷のハヤシカには撃沈しました。顔はともかく、立ち姿はなんか高貴に見えた。何故だ。眼科に行くべきだろうか。


最初のオープニングで、「喋れなくなってもコントが勝手に喋りだす」とあって、それを聴いただけだとだいぶ大仰な触れ込みに思えたのですが、それだけにわくわくも止まらなかったです。最後の最後、本当に言葉なしに動き回るカリカの二人が本当にこれでもかと笑わせてくれたのを見て、改めて凄すぎるなーと。合間の着替えの場面における二人の会話の伏線を全部回収して、回収しただけじゃなくてそういうことか!と気付かせてもくれて、げらげら笑った挙句の竜(笑)どんなサービス!面白すぎました。「俺が居なくなったら」なんて台詞を林さんに言わせておいて、ちょっとメロウな空気を作っておいての、まさかの竜(笑)二人の希望が叶っていくハッピーなめまぐるしさとか、ネクタイ型の剣が持つ爆発力とか、その他諸々、幸せとか別れとか呆然とか混乱とかが一片にどーんと襲ってくる様に、文字通り翻弄されながら、そりゃもう笑ってしまうのです。


そうしたあらゆるカリカのコントを支える、家城さんの真摯な台詞まわしだとか、林さんの稀有な存在感とキャラクターだとかは、言うに及ばず。特に林さんは、プレイヤーとしては本当にずるいくらいに何もかもが面白くなるように出来ている人だなあ。家城さんが林さんを面白く見せるための手法を知り尽くしているというのも大いにあると思いますが、それにしても面白い。踊ってても叫んでても泣いてても微笑んでても面白いです。ネクハゲもなかなかのものでしたが、やはりハヤシカの衝撃たるや(笑)
コントの合間で着替えをしながら二人がひたすら会話をあうブリッジのようなものがあるのですが、これがコントと同じくらい面白くて!カリカのポテンシャルはどこまでいくのか。もちろんこれはこれでコントの一端であり伏線の一部であることは最後の最後で判明しますけれど、それにしても面白い。そういえば途中でエレベーターマンションの二人と入れ替わって彼らが代わりに語り始めることで、次のコントが始まるのですが、それを2巡目ですでに銃で撃つという展開がまた破壊的。相変わらず林さんは銃が似合いすぎる。
新橋に林さんのパネルを持って「あなたの職場で見たことありませんか」とアンケートをとりにいった映像を、成り立たないからと出さないで放置という贅沢さも可笑しすぎる(笑)ていうかそもそもそのアンケートの発想が面白い。そしてそれを発想させてしまう林さんという存在もどうかしてます(笑)


まだ何か書き忘れているような気がしますが、きりが無いのでひとまずこれまでとします。思い出したら例によって追記するということで。とにもかくにも、カリカを知っていることは人生においてお得なことだった!と今回改めて思わされました。嫌になるくらいかっこいいなあカリカ。何とかして売れてくれないものか。こんな人たちが狭いコミュニティの中だけでもてはやされるというのは本当に勿体無い。いや実際言うほどもてはやされてるかどうかは分かりませんけども(笑)