箱雑記ブログ

色々まとめています

「文学的商品学」(斎藤美奈子)

この人の本を読むたびに本当に頭のいい人なんだろうなあと思います。私みたいな読み手が思いも寄らない視点、思いも寄らない角度でのアプローチを、とても簡単に誰にでも分かりやすい文章で提示してくれるというのは、多分誰にでも出来るようなことではないよなあ、と。私はそもそも評論というものを読み慣れていないので、余計にいろんなものが新鮮に思えるようです。
ストーリーの中身やテーマだけじゃなくて、出てくる物や文化などにまで視点を当てて読んだらもっと楽しいよ、というか、そういう読み方したっていいじゃない文学なんて、という内容で、私のような理屈屋の頭でっかちにははっとするような気分になります。ひとつの本を読むのに、あれだけの視点で挑むことが出来るというのは本当に面白い。何よりも、あれだけの本をあれだけ読みこなしている人が、どうしてあれだけニュートラルなスタンスを確固として持っていられるのか。それがとにかく驚きなのです。あまりにも第三者、あまりにも読者側の視線。だからこそ嫌味もなく小気味よく読めるのですね。
ちなみに私はこれを文庫で読んだのですが、佐藤尚之さんという方の書かれた解説文がこれまたものすごく面白かったです。引用したい文章がいっぱい。「作家は読者のために存在するのだ。」とか、目が覚めるようです。

文学的商品学 (文春文庫)

文学的商品学 (文春文庫)