箱雑記ブログ

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「グロテスク」(桐野夏生)

読みました。読んでて重苦しい気分になるのは覚悟の上だったので、自分の気力が充実してるときを狙って読んだのですが、考えていた以上に消耗しました。あんなに充電満タンで読んだのに、もう今すっからかんです。正直、あんまり毒と闇の濃度がすごくて、いざ感想を書こうとすると、完全に人に聞かせられないような自分の中の闇とか恥とかをさらけ出さずにいられない気がして、感想書くのが怖いです。こんな気分になる本て初めてかも。
これを読んだ女の人の感想はなんとなく予想がつくけど、これを男の人が読んだときにどう思うんだろう。まるでファンタジー長編を読んでるような、リアリティのない別世界の話だと思ったりするんじゃないだろうか。絶対理解できないと思う。あと、10代や20代前半のきらきら輝いてる若くて可愛らしい女子が読んでも、多分理解できないんだろうなあ。感情移入も出来ず、退屈な本でしかないんじゃないか。私の年齢くらいからが一番堪えるような気がする。人生を、若くてきらきらした時期とそうじゃない時期とで分けたら、後者の方がはるかに長い期間を占めてるんじゃないかと気付き始めた頃の年齢になって読むと、相当怖いと思う。
私は読みながら、自分がどんどん本の中に出てくる女達とちっとも違わないと思えてきて、それが恐ろしくてしょうがなかった。逃げる先が夜の街かそうじゃないかの違いでしかないように思えてきて、もちろんそんな簡単な話でもないんだろうけど、少なくとも彼女ら登場人物の若さと老い、容姿の優劣、貧富の差という格差社会に対する心境が、ひととおりリアルに感じますから。リアルに感じつつも、格差社会にとらわれない生き方も確かにあるというのも同時に考えられるんですけど。
何しろ読後感が凄まじいので、絶対に人にオススメはしません(これを私にすすめた姉を恨みたい。笑)けれども、人がこれを読んでどう感じたのかを知りたい、というのがすごくある。タイトルがこれほど本の内容を見事に表している本も、そうそうないんじゃないかな。気力が充実して「何でも来い!」くらい元気なときに、ためしに読んでみるのもアリかもです。
桐野夏生の長編は、3年に1本読むくらいのペースでないとバランスが取れない。そういえば、「OUT」は上巻で断念しました。今なら続きが読めるだろうか。
そんな感じで読んだ人の感想をネットで探していたら、たまたま吉本の芸人さんで感想を書いているブログを見つけてびっくりしました(笑)→アバンチュール森田さんの『武骨日記』:雪が降らないこんな日には
「女性には読んでもらいたくないけど読んでほしい一冊です。」という一文、ものすごく分かる。