箱雑記ブログ

色々まとめています

犬の心。


今年のキングオブコント準決勝の1日目が終わった直後、赤坂BLITZの外でお友達のお友達にご挨拶をする機会がありました。
その方が犬の心のファンだと聞き、長くお笑いを好きでいるお友達のお友達だということは、この方も長く犬の心を追いかけているんじゃないかな?と思い、犬の心は『バ』(2002年〜2003年にかけて開催されていた、犬の心の初の単独イベント)の頃から見てました、と言ってみると、案の定その方も「私も『バ』見に行ってます!」と返してくださって、嬉しくなりました。『バ』を見ていた人と今も劇場でお話できるというのはとても貴重だし、準決勝で犬の心が抜群にウケた直後だったのもあって、すっかりテンションが上がってしまいまして。「犬の心、あの出来だったら今年はありますよね!」「犬の心が決勝行ったら泣いちゃいますね」という会話をしたのをよく覚えています。
翌日の決勝進出者発表で、犬の心が10組の中に入っているのを見て、そういうタイミングだったんだ、犬の心というコンビの充実期だからこそ前日のような出会いがあったんだな、と妙に納得しました。昔からのお客さんも、最近のお客さんも、みんなが今の犬の心の勝負どころを見届けたくて準決勝に集まってくる、そういうタイミングだったのだな、と。

犬の心をはじめて見たタイミングは確か2002年あたりだった気がします。その頃見ていたチャイルドマシーンカリカが今はもうなくなってしまったことを考えると、頻度はともかくコンビとして定期的に長く見ているという点では今の芸人さんでは一番なのが犬の心じゃないかなと思います。
初めて見た頃から、犬の心はずっとコントをやっていました。たまに見る漫才も面白かったですが、それでもずっとコントでした。それも、キャラクターや役割の部分は変わっていったとしても、コントの根っこの部分にあるカラーはほとんど変わらない、犬の心らしさが染み渡るようなコントを、ライブに足を運ぶたびに見せてくれている印象です。
すごく派手ではないけれど、理屈と不条理であふれた濃厚な脚本で作られたどっしりと奥行きのあるコントを、唸ってしまうような演じ手としてのパワーで見せてくれる犬の心は、いつ見ても面白いから、単独ライブは欠かせませんし、定期ライブや「できる7人」を必死で追いかけるようなことはなかなか出来ないですけど、自分が見に行くライブに犬の心がいたら絶対に嬉しいしやった!と思います。見たら絶対に面白いものが見られるという信頼があるので、見に行こうかなどうしようかな、と迷っているライブに犬の心がいると、フットワークが一段階軽くなる、そういう人たちです。

だいぶ昔の話ですけど、まだ大阪に居た頃のジャルジャルの2回目の単独ライブを当時のbaseよしもとに見に行ったときに、あまりにも面白くて、関西の若手がこんなに面白い単独ライブをやってのけるなんて!と衝撃的で、根っから関東のお笑い育ちの私はちょっと悔しい気持ちがあったりもしたんですけど、そのときに「でも関東には犬の心がいるから!」と思ったことを強烈に覚えています。犬の心がいるから大丈夫、と。何が大丈夫なのかは今でも分かりませんけど。
それがちょうど、『ババ』とか『バババ』とかの、当時の若手の単独祭りでも図抜けて面白いコントライブを見せてくれていた頃でした。

そんないつも面白い犬の心のネタが、今年に入っていろんなライブで見るたびに、見たことのないネタであることが多くて、さらにその見たことのないネタがものすごく面白い!となっていて、あくまで私の中だけの話ではありますが、今年の犬の心はちょっとすごいんじゃないか、と思っていました。だからこそ期待も上乗せで見てしまうのに、そんなこちらの勝手な期待さえも軽々と乗り越えて笑わせてくれるから、本当にすごいことになっている!と。
犬の心がキングオブコントを見据えて始めた「犬の心本気ライブ」は確か2011年ごろから開催されていると記憶しているのですが、ずっと続けてきた本気ライブが4年目を終えようというところで決勝進出を勝ち取ったのを見て、芸人さんが色々なものを犠牲にして真摯につぎ込んだ労や情熱は、裏切らずに芸人さんに返ってくるんだ、と思わされました。ましてやそうして捧げていたのはあの犬の心だから、だからこそ、しっかりとそれが報われる形で返って来た時間に立ち会えて本当によかったと思いました。

先日見たカナリア安達さんのトークライブで、安達さんが、その場には居なかった犬の心の決勝進出を知ったときの話をしていて、「こんなに芸人を幸せにしたニュースは今までないんちゃうか」と言っていて、不意打ちでちょっと泣きそうになってしまいました。
芸人さんをそんな気持ちにさせる、犬の心というコンビの得難さを、改めて思い知りました。同業の人にこんな風に言わしめるって、どれほどひたむきにやってきた人たちなんだろうと。

だいぶ昔だと思うんですけど、「金持ちにならなくてもいいけど、もうちょっと面白くはなりたい」と言っていたのは押見さんではなかったかな。押見さんの言葉はいつでも特にシビアで地に足のついた言葉選びがされているイメージで、夢みたいなこととかお気軽なことをたしなめるような響きが強い気がするのですが、それだけに、この言葉が持つ「面白くなりたい」の重みみたいなものがとても印象的です。そして実際に犬の心は今年ますます面白くなってる。それがすごい。
決勝で犬の心の面白さがどの方向に転ぶのかはまったく分かりませんけど、あの複雑な色合いを持つコントたちが世に出ていくのを見られるのが、今から本当に楽しみです。

犬の心の門出に向けて何か書きたいなと思って、書いてみました。