箱雑記ブログ

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神保町花月「東北ラブストーリー 〜ラブ・レターは突然に〜」

非常に今更ですが、チーモンチョーチュウ班の神保町花月の感想をネタバレありで書いてます。



東京から田舎(島だそうな)の大学に入学してきた女の子と、島の男の子とのラブストーリーを軸にしたお話。チーモンチョーチュウfeat.フォービーズ、という感じで、主役というかメインをはっていたのはフォービーズの岡田さん扮する梓で、彼女と恋仲(という表現はちょっとレトロか。笑)になるのが白井さん扮する智也で、梓に恋をするもう一人の男の子が菊地さん扮する雄介。


梓がアメリカに智也に会いにきたときに、中谷さん扮する使用人(というのか?)が智也の居場所についてはぐらかしているのを見て、さらに雄介がわざわざ梓に合わせてアメリカにやってきたのを見たときに、「うわ、これはまさか」と智也がいない可能性(イコール手紙を書いていたのが雄介である可能性)に気付いてしまったのですが、そうすると、アメリカのシーンで出てくる登場人物全員の表情が、もうなんとも言えないやりきれなさで染まっているのが端々に見てとれて、ちょっとたまらなかったです。で、そこで気付いてしまうと、そのあとから語られる梓と智也の幸せな時間が、幸せな時間というだけじゃなくて別の意味合いでもって伝わってきてしまうんです、否応なしに。同時に、梓に振られてしまったけれど、梓を大事に思い続けていて、真実を知って手紙を書き続けていた雄介の心情とかも、思考が走って考えてしまうんです。
もう切ないなあ、と。雄介が切ないし、智也の両親が切ないし、何より、真実を知らずに笑顔でいた梓が真実を知る瞬間を思うと、胸が痛くてしょうがなかったです。
こういうお話の作りってわりとよくあるのかもしれませんけど、ベタなだけに強い、と今回も改めて思ったものです。


個人的には、雄介の心情にもっとスポットを当ててほしかったな、というのはあるかもしれません。雄介は、智也の気持ちと、智也が想う梓の気持ちを全部ひとりで引き受けていたわけで、多分そこには、智也への友情や同じ女の子を好きになったシンパシーと同時に、梓への想いも間違いなくあった、というかそれがなかったらやってないことだろうという気がするので、好きな梓に嘘をついてまで智也の気持ちを守り通した雄介の心の内を、もうちょっと表に出してほしい気もしました。そこの理由づけが描かれていたら、さらなるドラマが待っていたかもしれない。いや、そうでもないかもしれないけれど。


チーモンの二人がとにかくハマリ役で、絶対あて書き!と思いこんでいたら、少なくとも白井さんに関してはそうでもなかったらしい、というのを耳にしました。でも、あの智也は白井さんだからこそ、という空気があったなあ、と私などは勝手に思い込んでいるわけですが。私はあの智也がとても好きで、ずっと俯きっぱなしの男の子が、可愛らしい都会の女の子に出会って、明るくてパワー溢れる女の子を目の前にして不器用ながらもちょっとずつ近づいていこうとする様が、もどかしくも愛おしいなあと思って見てました。そういう、「手を触れるだけで心臓がばくばくする」みたいな、小さなことが幸せ、みたいな雰囲気が、白井さんの演じる智也にはすごくあって、それがひいては体が弱くて手術を受けなくてはならない、という生活を背負った男の子像にぴったり当てはまっていくのが素敵でした。人から見たら些細なことかもしれないけれど、智也にしてみたら梓との時間は小さな幸せの時間の連なりだったのかな、なんてことを思わせてくれるのがとても好きでした。
あと、雄介との対決の時の、鋭い声を発するときのはっとするようなメリハリは、白井さんの立派な武器だなーとしみじみ思ったものです。キジ役のときもあれに何度もやられたなあ。


岡田さん扮する梓は、明るくて元気で、自分の感情に正直な、いかにも「今時っぽい」イメージ満載の女の子で。プリンスオブサンタクロースの時のヒロインと比べて、とてもとてもリアリティのある若い女の子像というイメージ。自分の感情に正直すぎて、ちょっといらっとするところも多いけれど、ああいうあけすけさが逆に智也みたいな男の子には眩しかったのかも、という深読みもしてみる。自分のことばかりだった女の子が、自分が知らないところで自分のために行われていたことを知る流れは、これまたベタとはいえ美しい気がするのです。


そんな梓のことが好きだけれど報われない、菊地さん扮する雄介は、あの男気とか、熱い感じとか、情の厚さとか、とっても人間味あふれたキャラクターでこれまた好きだったなあ。雄介の視点を思いながらストーリーを思い返してみると、こんなに切ないことはないのですが、ずっとざっくばらんに率直な明るさを見せていた雄介が、最後に真実を梓に伝えるときに声を震わせながら絞り出すシーンは、本当に泣かせてくれるなあ、と。菊池さんは本当に安心して見られる素敵な演者さんだと思いました。


カナリアポテト少年団はそれぞれちゃんと存在感を発揮していて楽しかったです。安達さんは、「頭蓋骨を抱きしめて」と同じ人間とは思えないくらい、自由にボケ倒して楽しんでいたように見えました。何しろ一緒にいたのが内藤さんなので、よけいにそう思ったのかもしれない(笑)ギャップがすごい。内藤さんは、逆にもっと自由過ぎてばたばたしてしまうかと勝手に思っていたのですが、全然そんなことはなくて、ちゃんといちキャラクターとして舞台になじんでいるのがいいなあ、と。
ボンさんは、今回に限ってはボンさんはボンさんでした(笑)もうらしさ満点。島一番の大富豪の息子、という設定なのですが、どこかしら哀れさが漂うのもボンさんならでは(笑)ポテ少菊地さん扮する江川に淡々とお金を持っていかれる様とか、可笑しかったなあ。
ポテ少菊地さんがとにかくハマリ役というか、ほかにこんなのここまでハマる人いないだろう、と。90年代トレンディドラマ全盛期を隅々まで体感できるような菊地さんの立ち振る舞いに大笑いしっぱなしでした。正直これ、どのくらいの年代まで分かるんだろう?(笑)「あすなろ白書」がリアルタイムの人がお客さんにどのくらいいたことやら(笑)知らなくても楽しめたはずですが、知ってたら知ってたで、もうたまりません色々と。あんなにノリノリの菊様が見られるなんて想像していなかったので、嬉しい誤算でした。最高だったー。そういえば江川さんは、10年以上昔のファッションを島に発信してましたが、あれがわざとなのか本当に10年前のファッションがトレンドだと思っていたのか、どっちだろう(笑)
中谷さんは、出番こそ少ないものの、何気に重要な役どころ。個人的には中谷さん扮するセバスチャン(笑)の台詞でいろんなことに気付けたりもしたので。人の良さがにじみ出る感じがよかったです。


フォービーズのみなさんは、それはもうびしっと演じてらして頼もしい!やっぱり私は伊藤さんが好き過ぎます。台詞も出番も多いわけじゃないのですが、最後の最後、泣き崩れる梓に向かって「ありがとう」と泣きながら言うシーンはたまりませんでした。もう大好きな女優さんです。岡田さんも、プリンスオブサンタクロースのときとはまた全然違うタイプの女の子を違和感なしに演じてらして、役者さんてすごいなーと今回も思ったりしました。


そんなところです。細かいツッコミどころはあるにはあるけれど、それを差し引いても楽しく見られるお芝居でした。