箱雑記ブログ

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神保町花月『頭蓋骨を抱きしめて』

2日目の公演に、突発的に当日券で滑り込んできました。
ネタバレになるので多くは語りませんが、神保町花月においてはちょっと異色のお話で、今までの「笑えて楽しめてちょっといい話」を期待していくと、脳天をかち割られる気分になることうけあい。
以下、お話のネタバレはしてませんが、公演のカラーや雰囲気についてはがっつり書いてますので、先入観を持ちたくないという方はご注意ください。



この公演を見るまで、「吉本のお芝居の劇場」=「笑えて楽しめてちょっといい話、たまに泣けてじーんときて」の図式が自分の固定観念としてあることに気付かなかったのです。考えてみれば、もともとが「お芝居」と銘打っているのだから、別に笑いやいい話に重きを置く必要はないのです。世の中のお芝居って、不条理やコンプレックス、恐怖や理不尽、がつんがつんと頭を揺さぶる衝撃、とことん救いのない悲惨さを強調してみたり、そういうものが、あったかいお芝居やほろっとするお芝居と同じくらい当然のように存在してるわけですから。
だから、神保町花月がこういうとことん後味の悪いサイコスリラー?サスペンス?を題材にして、お客さんの心にもやっとしたものを残すことなんて、考えてみればあって当たり前、逆になかったことが不思議、だったのですね。
ただ、今までの公演を結構な数見てきた私は、ちょっといい話、ちょっと笑える話、ミステリーを笑い仕立てに仕上げたり、感激して涙したり、心を打たれたりするラインナップを見て、「神保町花月のお芝居はこういうものだ」という固定観念を勝手に持ってしまっていたんだな、と。別に明るい話に固執する理由はないのですよね、考えてみれば。だって「お芝居の劇場」なのだから。
というわけで、「頭蓋骨を抱きしめて」は、そういう意味で大変新鮮でした。気付かせてくれてありがとう、と思ったものです。


私が当日券で見に行った理由は、どうやらちょっと怖そうなお話に仕上がっているらしい、と小耳に挟んだからなのです。ホラー好き且つ狂気好きなもので、いてもたってもいられなかった(笑)
サイコホラー?として見ていたら、お話としてはわりとシンプルだし、恐怖の演出も王道で、ストーリーの先も読めるような仕上がりになっているのですが、とにかくあの劇場であれだけの阿鼻叫喚が表現されているということが非常に面白かったです。その上、お話がどうのというより、演じている皆さんの迫真の演技がとにかくいいのです。狂気の芝居には有無を言わさずぐっとひきつけられてしまいました。演者さんがまたみんな本当にいい味を出してるんですよねえ。
そういう意味では、ものすごくお芝居色の強い舞台だったとも思います。どうやら私はお芝居色が強い方が好みなのですが、これはそういう意味でも見ごたえがあってよかったなあ。自分の贔屓の芸人さんがこういうお話のお芝居に出てたら、きっと足しげく通ってしまうな(笑)


カーテンコールで、高井さんが「ここまでやっちゃってよかったんですかね?」なんておっしゃってまして、確かにきっと、楽しいお芝居を期待して見に来る方もたくさんいると思うので、感想は多種多様あると思うのですが、私は好きでした。なんだったらもっと怖がらせてほしいくらい(笑)一度がっつりホラーのお芝居とか、神保町でやってほしいなあ、と思いました。これ次に行ったときにアンケートに書いてこよう(笑)
そういえば安達さんは「僕は鈴木(つかさ)さんの演出どおりにやっただけですから」と笑ってました(笑)そうか、脚本ももちろんですが、あれだけどぎつい演出をつけたのはつかささんですよね、さすがです。
千秋楽にも行く予定なので、楽しみです。どのくらい進化してるのか。

余談ですが、恐怖好き、怖がりたがりの私が、今まで見た神保町花月で一番その怖がりたがり心を満たされたのは、「コーポきよはる」でのラストのシーン、神宮寺に相対する北林を見ているときでした。
個人的には、あれを上回るホラー度の高い公演が、今後出てきてくれたら最高です(笑)