箱雑記ブログ

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カリカコント+「MEETS」vol.2

待ちに待った、今年最後のカリカコントに行ってきました。
とにもかくにも、カリカコントを見ないなんてもったいない、ということを衒いもなく思えるライブでありました。上手く伝えられないのが本当にもどかしいのですが、MEETSは特に、来年以降のMEETSやカリカコントで初めて彼らを見た、という人たちが、「もっと早く見ておけばよかった!」と後悔するんじゃなかろうか、というひそかな想像が大袈裟にも思えないのです。
以下、見た人にしか伝わらないであろう、不親切且つ長い感想。



不勉強なもので、MEETSな役者さんはほとんど存じ上げないという体たらく。なので、的外れなことを言っているかもしれません。ごめんなさい。


・『助監督の鷹田鷹夫君』(小松利昌)
映画「豚の真珠湾攻撃2008」のクランクイン前に監督と主演と助監督で顔あわせ、とただ書くだけならこんなに簡単なことはないですね(笑)助監督の鷹田君が小松さん。監督のベアー猪熊監督が家城さんで、主演の鮫島カツオ氏が林さん。
とりあえず、豚語ってだけであれだけのことが出来るという事実にびっくりです。冷静になると、何豚語って!ってなりますけど、そこで冷静になる暇がない(笑)理詰めで「豚語は36種類であとはレベル1から3までの感情表現の段階がある」とかもっともらしく説明されてどうしたらいいのか。
最初はいらっとする助監督のキャラで押すコントなのかな、と思ったのに、展開していくとそれだけに留まらなくて、豚語のディテールのこだわりとか*1、監督と助監督の跡形もないキャラとか、それを全部力技で押し切る勢いとか、もう何だろうこれはと感心するしかない(笑)
小松さんの「自然な演技」が素晴らしすぎていっそ唖然とするほどでした。すごいわー。ふり幅の広さが、この30分だけでも強烈に焼きついてます。林さん扮する鮫島氏(テレ東キャスターからタレントに転身)の演技の不自然さは、あれはあれで国宝級です。「空ばっかり見てたって何も落ちてこねえか」の落ちてこねえか、のところのゼスチャーとか、「ってお前かよ!」のところの跳躍力とか、度肝を抜かれます(笑)


・『NO SEX NO AIDS』(中野公美子)
ある意味NGワードがどどんとコントタイトルにぶら下がってるのを見て、こういうのをカリカが持ってきて面白くないことがなかったなあ、と思いましたが今回も例に漏れず。家城さんは、どんなNGワードでも使わなくてはいけない必然性があるときには迷わず使っている印象なので、それは逆に茶化すとか安易な手段で使われているわけではないってことかもしれないなーと良い意味で捉えてみる。エイズ使ってコントですっきりさせてくれる芸人なんてそうそう居ない。*2
ちょっとミステリでサスペンスで、不可思議で奇妙な、状況設定と展開。ああいう条件付けとか、ルールとか、そういうややこしいものを駆使してモノを作る人って無条件に尊敬します。私がそういうのが苦手というか出来ないタイプなので余計に。前のMEETSのときも書いた気がしますけど、魅力あるミステリの定石としてどこぞで見たことのある、「冒頭は不思議さや奇妙さを押し出して、最終的にそれに理論的な説明がつく」というやつが、ものすごくちゃんと守られてるなあ、とここでも思いました。冒頭の状況のおかしさで、これはなんだろう?どういう意図と理由があるんだろう?と引きつけておいて、種明かしはさっぱり、後味もよく。気持ちいいなあ。もちろんその中で笑いも耐えなくて、でもどちらかというと、1本目のザッツコントぶりと比べると、ぐっと物語要素が強いコントだった気がします。
とにかく中野さんの作り物のような美しさと捩れた状況での婀娜っぷりのコントラストが素晴らしくてどきどきしました。あれは本当に綺麗な人じゃないと、説得力半減しちゃうよなあ、と。歪なキャラクターがピンポイントですごく好き。逆に家城さん扮する清子さん(子はこれでいいのかな?)*3のある種の凄まじさも、あれくらいじゃないと説得力がないし、そもそもお話がなりたたないという(笑)家城さん、体はってる、と言うべきかどうか(笑)個人的に、清子さんが謎のトラウマのフラッシュバックでのたうつところが、理由もなく奇矯な印象で笑いました。すごいわー。林さんの副社長タイプぶりは適役すぎ(笑)


・『価値観庁』(福田転球
前回のMEETSでも、不意をつかれて泣かされたコントがあったけれど、これも不意をつかれて見事に泣かされました。複数回見て複数回泣いた・・・安い客ですみません。こういう、作り手の何かしらの意志が垣間見られるコントとかって、それをどうやって出すか、どこまで出すかがすごくデリケートで難しいと思うのですが、家城さんの場合はそこを説教くさくなく、出しすぎず出さなすぎずで絶妙だなあ、と思います。ちゃんと心があるコントに出会える確率って実はあまりないから、嬉しくなってしまう。むちゃくちゃで不条理なのも好きですけど、こういうのも大好きです。こういうのを見ると、乙女少年団見たいなあ、と思ってしまう。
みんながみんな、最終的に全部上手くいってよかったね、ということにはならなくて、仕事を解雇されてしまったりするけれど、でも出てきた人の一番大事なところだけは、見失わないというのが良い。主任さんの手にちゃんと一番大事なものが残って、それが何より幸せであるのだなあ、という主任さんの泣きそうな顔や口調が見られることが素敵だと思います。そういうのがあって最後のオチで、涙出てるのに笑わされてしまうのも、いっそ爽快です。
お話そのものも素敵だけど、それにしてもそこに転がるまでのやりたい放題ぶりが笑えて笑えて(笑)芸能人の価値の捕らえ方というか数値の妙が抜群(笑)途中のカリカ二人でのやりとり、相当日によって違っていたのでは。千秋楽はものすごくタイムリーな話題を持ってきてたしなあ。飽きさせないなあ。
あと、こういう芝居のときの林さんのスタンスがいつも素敵。家城さんが林さんという人の使い方をよく分かっているということなのかもしれませんが、例えばくさい台詞を言ってもそのくささが違和感ないというか、すごくくさいなーと思うんだけど、不自然じゃないというか何というか。くさい台詞を言っても許されるというか。言い表すのが難しくてもどかしいのですが。あと、家城さんは家城さんで、前のコントとのキャラの差が激しくて、でもそれをまったくものともしなくて、すごい。個人的に家城さんが中立っぽくまともな男の人を演じてるときって、オカマや女性を演じているときとはまた違った色気を感じていいなあ、と思います。新鮮なのかな。普通の男の人を演じているのが新鮮というのはどういうことだろうか(笑)
転球さんをちゃんと見るのは初めてだったのですが、ものすごーく魅力的な役者さんだ!と感激しました。ああいう役を転球さんに振り分けた演出勝ちなのかもしれないけど、それにしても、素晴らしく胸に迫る「情けなくも愛しい日本人像」で、まいりました。かっこよくもなく、派手でもなく、どこか小さくて寂しい、でもそれが妙に憎めない人間を描ける作家さんには弱いのです。
ああそうだ、忘れてたけどあの衣装、価値観庁の制服なのか?なんなのあれ(笑)


・『壊れたブレーキ』(加藤啓)
2本目とはまた違った、こっちは少しサイコホラーテイストの入ったコント。これも大好きだったなあ。ホラー好きなのでこういうのには目が無いのです。最終的に脱力しっぱなしでほっとして笑いっぱなしになる馬鹿馬鹿しいオチについても、なんとも可笑しくて後味も楽しい(良いとか悪いとかでなく、楽しい)のが良いなあ。
話の頭にあった自転車というキーワードが、後半の佳境のところでまたすぽんと出てきた瞬間の、あの頭に稲妻が走る感じ、あれは本当に得がたい体験です!ああいう、気付きというかひらめきというか、あ、それがここに!っていう衝撃は本当にいつどこで何度味わってもたまりません。こんなものまでカリカは味あわせてくれるんだもんなあ。「ここ僕の家です」の瞬間も、また違って意味でうわ、と思えるのが好き。
加藤さんをちゃんと見るのも初めてでしたが、こんなに適役もなかったんじゃないかな、と。ごくごく普通の何の変哲もない青年なのに、どこかおかしい、もしかしてちょっと怖いんじゃあ?と何もない時点からなんとなく漂わせてくれるあの感じ。素晴らしいなあ・・・(こればっかりですみません)それまでの怖い感じと、全部が分かってからの空気の違いっぷりが凄いわー。キャラは全然違ってないのになあ。憑き物が落ちたって感じで。
あと、脅されている側がスーツですごくちゃんとした社会人ぽいところがまた怖い。社会のごく一般的なパーツらしく見える人が、異常な体験を強いられている、というところに変なリアリティを感じたり、妙に倒錯的な感覚を感じたり(それは大オチがアレだからか?笑)(そういえば、半年前からヤマトくんに居座られて、それまでは彼女もいる人なのに、「今までは嫌々だったけどこれからは」ってどういうことなのか。笑)
本筋とは別のところで、七三眼鏡スーツの全力のWiiテニスの素晴らしさとかは筆舌に尽くしがたい(笑)加藤さんと林さんのモノマネ無茶ぶり同士もまた。アドリブの場所で外さないってすごいよなー。林さんはまだしも、加藤さんは役者さんなのになあ(笑)いつも思うことですが、MEETSで役者さんが演じるコントを作るカリカも凄いけど、芸人さんと一緒にコントをやりきってくれる役者さんのスキルもただ事じゃないですよね。
そういえば、3本目とこれは家城さんが比較的まともな立ち位置で話をナビゲートする感じですね。まともと言っても、あれですけど。所詮は当社比ですけど(笑)


幕間のお芝居は、パンチ浜崎/コッセこういち/小栗由加さんの三人芝居。今回は、お嬢様とそのお付きと、ゲイのスカ○ロ野郎とのなんとも素敵な恋模様。とにもかくにも、お付き役の浜崎さんの役が!スタンスが!たまりませんでした!最高だーなんだあの素敵な人は!「最初から両思いで始まる恋なんてありませんよ」だの、「女の仕事は男の告白を受けることと、男がだらしなくなったらふってあげること」だの(台詞はどちらもうろ覚え)、もう、どんだけかっこいいのかと。一番好きだったのは、コッセさんに「もしもお前が女の子を好きになるとしたらどんな子が好きか」と聴くときの、「俺だってこんなこと聞きたくねえんだよ!」の叫び。うわー!ってなりました。浜崎さんは、こういうの上手すぎる。
小栗さんも、ちょっと身勝手で、ふわふわしてて、妙に可愛らしくて憎めない、素直な女の子像がぴったりでなんとも微笑ましかったし、コッセさんについては毎度のことながら、言うことは何もないです(笑)今回はちょっと切なくもあったですよね。
いい話だったなあ。きゅんとしたり、色々揺さぶられたり。最終的なあの大オチについてはびっくりしすぎて大笑いしてしまいましたが・・・ああ、なんで素直によかったよかったと思わせてくれないのか!あれは家城さん一流の照れ隠しなのか、はたまた最初から予定調和だったのか。どうなのだろう・・・。七三眼鏡のスーツサラリーマンでピストルぶっぱなして違和感ないのは世界で林さんだけです。


全体的に、ぐっとお芝居モードに近いお話が多かった気がします。乙女少年団が大好きな私は、これはこれで相当好きで、抜群に楽しめました。本当に、これを見ないのは損してるよ!と言い切ってしまいたいくらい。多分、カリカでしか得られないものが、カリカコントにはあります。それはもう絶対。
コントでもなくお芝居でもない、のではなく、コントとか、お芝居とか、ミステリとか、サイコホラーとか、きゅんとくる恋の話とか、家族とか国とか、そういうものを全部内包したものが、カリカという人たちが作るものなのだということだと勝手に断定。もっといろんな人にたくさん見てもらえたらいいのに!と思えてしょうがないです。
とりあえずここまで。長くてすみません。何か思い出したら追記します。

*1:犬募金をして豚語一覧表を貰った人なら、発音記号は分からずとも変なこだわりと妙な凄みは感じたのでは(笑)

*2:以前キングの今野くんが、「エイズネタって絶対引くよね」って言ってたのを思い出した。

*3:「キヨコのキヨは清らかのキヨ、キヨコのコはキヨコのコ」