箱雑記ブログ

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カリカコント+「MEETS」vol.1

行ってきました。お待ちかねのカリカコント。今回は役者さんをそれぞれお一人迎えてのコントを4つ。

「ヌキ・キャバ」※・の場所にハートマーク:平田敦子
「BROTHER〜血より濃いもの〜」:柏進
「小数点以下の繁栄」:松田暢子
「叫べ!!〜スプリング・フェスティバル」:石原正一

それぞれコントの合間に、舞台装置のセッティングを行う3人(パンチ浜崎/コッセこういち/工藤史子)のコント。これが3つ続き物で入ってくる構成。

以下ネタバレもありつつ、がっつり感想を。


「ヌキ・キャバ」は、おなじみ女装の家城さんと平田さん、お客さんが林さん。
4本の中では一番軽め(内容が)のコントだった印象。とにかくこのコントは、平田さんのコメディエンヌとしての素晴らしさを堪能するだけで十分楽しめてしまうという。素晴らしいなあ、あの堂々たるコントぶり。女性のコントは自分の中でどこかが吹っ切れずに見ることが多いのですが、平田さんは本当に、とにかくちゃんと笑える。それがまず凄い。
何が違うんだろう。コントに対する作りこみ方というか、コントにおける存在感が緻密で隙が無いから、笑うしかない、みたいな・・・難しいなあ、この感じを言葉で表すの。家城さんの脚本における平田さんの演じぶりって、笑いを取るというより本当に世界に組み込まれていて、その上で平田さんにしかないパワーとか魅力を存分に発揮して、それが最終的に笑いにつながる、という感じなのがいいのか。
駄目だしっくりこないなあ。なんだろうなあ、誰か言葉でこの感じを表してくれないかな(笑)要するに、とにかく平田さんが素晴らしいと言いたいだけなのですが。
一青窈の「もらい泣き」を歌うシーンでの、家城さんの歌う一青窈のコピーの完成度があんまり高くてそれだけで惚れ惚れ(笑)あと、林さんて暴力が抜群に似合うんですよね・・・いいんだか悪いんだか(苦笑)


「BROTHER〜血より濃いもの〜」は三兄弟のお話。一郎=柏さん、次郎(二郎?)=林さん、三郎=家城さん。
これはもう、本当に本当に、好きすぎました。4つの中で私に一番乙女少年団を彷彿とさせたのもこれ。
もともと父子モノや兄弟モノのお話が好きなのもありますけれども、それにしてもこれは・・・ちょっと見事すぎました。個人的に、お話コントとして隙が無さ過ぎる。
私、2回見て2回とも見事に泣きまして、しっかり泣いた上で最後になかなかブラックなオチでしっかり笑わされてしまうのです。もうたまらない。なんだこれ。
カリカというか家城さんの作るものは、突拍子のない設定を持ってくることが多いような気がするんですけど、これは設定そのものはそれほど突拍子の無いものでもなく(いや、普通じゃないですよ基本的には。笑)、状況も分かりやすくて、その代わりキャラクターや舞台背景がやたらとしっかりつかめるような作られ方をしていて、その上で、そこからブレない展開で笑わされたり、泣かされたり。泣かされ方がわざとらしくないのも、私が好きな理由のひとつかなあ。状況は完全に湿っぽいものなのに、話の流れには湿っぽさは極力排除されてて、それだけに後半の展開にささやかなドラマがあって。
多分、脚本が本当に緻密に丁寧に練られているんだろうなあ、と今思い出すと感じるんですが、どうだろう。頭から「吉田さん」と呼んでいることで関係性が分かるけど、それが後々の展開にしっかりつながっていくのとか、本当によく出来てるし、それが最終的に話の核になって、こちらの感情も揺さぶるのだから、本当によく出来てるなあ。
でも見てる最中は良くできてるとか感じる暇がないくらい、自分の中でいろいろと感じるもののあるコントでした。
かっとんだ設定とか、狂った発想とかが元になっているのではなくて、作り手の心の在り方とか気持ちの表し方とかの、感情を司るようなお話だったかな、と。カリカのコントよりむしろ乙女少年団でいつも「ああ、いいなあ、大好きだなあ」と感じるタイプのお話だったような気がします。
生真面目な次男や飄々とした三男のキャラクターはカリカファンには身近なものだけど、柏さん扮する長男のすかっとしたキャラクターはなかなかカリカではお目にかかれないもので、それだけでも新鮮だったし、そういう要素がひとつ入るとこういうお話が出来るのか、という感動もありました。
それでまた、柏さんが素晴らしいんです!むちゃくちゃなのに憎めない見事な一郎像。


「小数点以下の繁栄」って、タイトルだけでもずるいなあ、と思う。絶対面白いと思いますもん、タイトルだけで。
松田さん、すっごい可愛らしい女優さんだった!目ぱっちり、細くて品があって、おかっぱの髪はさらっさらで、見ていてきゅんとなってしまいました。本当に本当に綺麗な女優さんで、うわーと思っていたら、あんなことを、あんなことを、よりにもよってあんなことをさせるなんて!(笑)別の意味でうわーと思う途中からの展開(笑)
これ見てて、トークライブで家城さんが自分のことをSだと言っていた理由がちょっとだけ分かった気がしました(笑)そして見事にやってのけてくれる松田さんの女優魂もやっぱり素晴らしい。
4つの中で一番コントらしいコントだったかな。ハムだったし(笑)
コントらしいコントだったけど、林さんの台詞がしっかり気持ちの良い伏線になっていくあたりにわくわくしました。ああいうところ、本当に良く出来てるよなあ、としみじみ思ったものです。作ってて頭こんがらがったりしないのかな。
私がこのコントで一番凄いなーと思ったのは、エセっぽい気狂い台詞と、本物っぽい気狂い台詞を、作る時点で作り分けられているという点。「パンは均等に切っている」でしたっけ、本当に危ない台詞に思えるんだもの。家城さんの頭の中って・・・(笑)
あと家城さん扮する文筆家のキャラクターが古畑チックだったのも妙に気になりましたが気のせいだろうか(笑)


最後の「叫べ!!〜スプリング・フェスティバル」ですが、私これの原型みたいなものを、velvet under//misinで見たことあるような気がします。多分。パンの木箱を見た瞬間に、あれ、と思い出したのですが、これって何の公演だったかな・・・公演の中のほんの一部のシーンでパンの声が聞こえてパンが耳をちぎられて悲鳴をあげて、っていうのを見たんですけど。どの公演だったか思い出せない。どなたか覚えてる方いらっしゃいませんか。⇒1/23追記。「ナツの魔物」だそうです。コメントにて教えていただきました。ありがとうございます!
それを見たときも、「パンの声が聞こえるって、家城さんの頭の中ってどうなってるの・・・」と本気で思ったものですが、あれがこんなすごいコントに生まれ変わるなんて、本当にびっくりした(笑)びっくりして、結局感動した(笑)
サスペンス風にコントが始まって、途中でキャラクター同士の謎解きがあって、話もちゃんと最後にまとまって、パンなんだけど壮大な話で終わるという(笑)
2本目のコントが感情を表すコントだったとしたら、これは完全に狂った発想メインで、そこに展開をくつけてどんどん不条理に仕上げる形かな、と勝手に思ったりしました。これは本当に面白かった。なんだっけ、ミステリ小説の定説か何かで、「冒頭は謎や不思議を押し出す」みたいなのがありませんでしたっけ。完全にうろ覚えですが(苦笑)なんかそんなのが。不思議で始まって、最後はその不思議を理論で説明づけるのが本格ミステリの基本、みたいな。
このコントは全然ミステリとかじゃないけど、そういう、ちょっと怖い謎めいた感じで始まって、それが解きほぐされていく流れはかなり面白い。ただし、その話の主軸は春のパン祭りなんですが(笑)ああ、なんて不条理。最高です。
合間に挟まる春のパン祭りグルーブもたまらないし、そこから起承転結の転に至る話の無駄に大きな展開も馬鹿馬鹿しくて最高だし、それを大人が3人で本気でやっていると凄みも感じて、そんな凄みを感じているのに主軸はパン祭りなのが大笑いだし、それを真剣に見ている自分に大笑いだし、我に返ると何これ、みたいな感じがたまらない。
まさに、ザッツ不条理。もう大好きです。
主題以外にも、あの家計図(とは言わないのか)の複雑さとか、あんなの本当によく思い付くなあ、と思う。工場に謎があって、パン祭りに中止の謎があって、父と息子にも謎があって、これは何だろうと最初の3分くらいは思っているのが、最終的にあそこに行き着く、というのが・・・もうたまらない。
石原さんのパワーと存在感に脱帽。素晴らしい。釘付けになってしまう。あんな特異な役が様になるってなかなかないんじゃないかな!


ブリッジのコントは、普通にストーリーとしてすてきなお話だった。ああいうの大好きです。
工藤さんの、素朴な中にびしっと芯の通った立ち位置がものすごく心地よかった!浜崎さんはああいう駄目なキャラがすごく似合うし、コッセさんに至っては、何を言えばいいのか分からない(笑)
最後に即興コント(なんだよね?2回見て設定違ったので)でコッセさんがツッコミをしていたのですが、あのツッコミにならないハチャメチャさに大笑いしました。すごいわー何だろう、あの力技。
ブリッジでひとつコント作ってるのがまずもって新鮮だし。本当に面白いことをやるなあ。


役者っぽいカリカの真骨頂は2本目のコントで、コント師としての真骨頂は4本目(パン祭りマニア知識のあたりとか)で、どちらも林さん家城さんやっぱりお見事。1本目と3本目は、どちらかと言うと女優さんメインで楽しむ感じ。2本目4本目は俳優さんの力を借りてがっつりお話を見せられる感じ。というのが個人的な感想。
去年くらいから、今のカリカは裏切らないって私はこっそり言い続けていたのですが、今年も引き続き言わせていただきます。あれだけ期待して行って、こんなに満足させてくれるなんて、なんて素敵なんだろう。
4本全てきっちりストーリーのある(1本目はそうでもないか)コントになったのは、やっぱりお芝居を生業としている方々が参加することが影響しているのかな、と思ったけれど、よくよく考えるとカリカのコントって基本的にちゃんとお話や起承転結が綺麗に作られてるものも案外多いかもしれない。
本当に、見事なまでにカリカ色全開で、内容も濃密で、役者の皆様の凄みを等しく感じることが出来て、大満足です。当たり前みたいに絶賛します私(笑)
これだけ書いたのに、まだ言い足りないような気がするなあ。とにかく面白かった。大笑いしたし、泣いたし、とにかくがっつりと「見た!」という気分になりました。


次は6月にMEETS2があるとか。
ちょうど見たくなるスパンかもしれない。本当に楽しみです。