箱雑記ブログ

色々まとめています

朧の森に棲む鬼

人生初、新感線。
そして人生初、生の小須田さん(笑)


とにかく隅から隅まで極上のエンタテイメント。
見所しかない。だからって大騒ぎするだけじゃなくて、じっとりと底冷えするようなものを感じたり、混乱したりもして、忙しくて、めまぐるしくて大変!
ストーリーそのものは難しいものではなく、シンプルなものなのに、それを休憩挟んで3時間、一度も飽きさせることなく、それどころかどんどん引き込みながら展開されていく様は圧巻でした。これの前に見たのがNODA・MAPだったのもあって、完全に対極のお芝居を見たなあ、と面白かった。


とにかく登場人物が全員かっこよくて隙がない。隙がない上にそれぞれが余すところ無く見せ場があって、見事というほか無いです。
染五郎さんの悪のカリスマぶりは最初から最後まで黒い輝きのごとき激しさで、いやーこれほどとは。あの迫力は本当にすごい。悪が魅力的に描かれているというだけでも、色々とたまらないものがあるのに、身内を裏切り周囲を利用し頭と舌先と美貌をフルに駆使して上り詰める夢のような男を、びっくりするような説得力で演じて見せてくれるんです。


そして阿部サダヲのあのずるさは何事かと!(笑)
もう、舞台出てくるだけでずるい、声を発するだけでずるい、殺陣なんてやろうものなら、こちらの目を奪わずにいられない。動きのひとつひとつが全部華やかで、キンタのキャラもあるだろうけど最初から最後までとにかく引力全開、はしゃいだり笑ったりされるたびにいとおしくて、大立ち回りを見せられれば胸が躍らずにいられない、という体たらくで、うわー何だあれ何だあの人!と本気で悔しくなりながら見てました(笑)
NODA・MAPであの人を見たときも、あの視線引き付けぶりがずるいなあ、見事だなあ、と思ってましたが、今回はキンタというキャラの純情さも手伝って、狡さ千倍(笑)通りすがりのような私でさえこんな状態なんだろうから、ファンの方はそりゃもう大変なんじゃないか、なんて余計なことを考えるほど。
大袈裟な言葉で言ってしまうと、阿部サダヲって、本当に天然の役者さんなんだなあ、と思った次第です。天性のというより、天然の。少なくとも今回の舞台を見ている分には、あの人が舞台に立たない仕事をすることは、天地がひっくり返ってもありえないんだろうな、なんてことを確信させるような、そんな役者ぶりでした。ドラクエの勇者が生まれたときから勇者であるように、生まれたときから役者、みたいな。職業・役者、じゃなくて、属性・役者、みたいな。


古田さんのずるさは阿部さんとはまた違った種類の狡さで、要するにかっこ悪いわけがないじゃん!というものです。存在感が凄い。黙って舞台の奥に立っていても何かしら威圧感を漂わせているし、ただただ無言で立っているだけなのに、彼の中の不穏な心境が2階席にもじわじわと伝わってくるというのが・・・凄い役者さんだなあ。


私、あんなに破天荒な小須田さん見るの初めてだったからびっくりしました(笑)いやー素敵すぎる。この公演の楽しみのひとつは生小須田さんだったのですが、ふり幅がすごいわー度肝を抜かれた(笑)
それから、粟根さんが見事に眼鏡だったのを見て、姉妹で「眼鏡だ・・・!」と囁きあったのはここだけの話(笑)怪しげな参謀役だなんて、似合いすぎです。
姉が一番お気に入りだったのがオオキミ。あの役は実はものすごーく良いですね!死に際とか、うわーってなる。


あと、新感線初の私は、女性キャラクターのあまりのかっこよさに打ち抜かれっぱなしでした。ツナ様のかっこよさは何事ですか!男共にまったく引けをとらない迫力ある立ち姿である一方、女としての脆さや哀しさを漂わせる様は本当に美しくて。
私と姉のお気に入りはシュテンでした。まずもってとにかく綺麗過ぎるのがひとつ、ツナ様とは違った瑞々しく凛とした強さもいいし、声がまたいい。一応オペラグラスを持っていったのですが、何度もオペラグラスごしに彼女を見てしまった(笑)
シキブ様がまた唸るような女ぶりで、「だいっ嫌い」のあたりとか、あの怖さとか哀しさは、表情まで歪に見えてくるような感じで。
私、普段見に行くお芝居ってそんなに数多くないんですけど、そんな中でもこんなに女性のかっこいいお話ってほとんど見たことなかったので、ものすごく新鮮だし、そうだ私は強くて綺麗でかっこいい女の人が出てくるお話が大好きだったんだ、と思い出しました(笑)

殺陣のあるお芝居って普段まったく見ないので、それだけでも大興奮でした。本当に全ての殺陣のシーンがかっこよかった。役者さんの体力に恐れ入ります。シャープで艶やかな染五郎さんの殺陣はもちろんのこと、ずしんと地に響きそうな古田さんの殺陣もいいし、やっぱり阿部さんの足に羽が生えたみたいな躍動感の殺陣には目が釘付け。思い出せば思い出すほどずるいなーあの人!(笑)大人計画って、殺陣の必要なお芝居そんなにやるんですか?ってくらい。
で、その殺陣のたびに翻る衣装!衣装、なんであんなにみんな素敵だったんだろう!主役級の皆様の衣装チェンジの回数もめまぐるしく、特にライと女性陣の衣装はどれもこれもがみんな素敵で、それだけでも目の保養(笑)
それから舞台装置の美しさ。舞台に雨が降るのは見たことがあっても、滝が流れるのは初めて見ました。すごいわ。


全てが見所、余すところなくエンタテイメントで、楽しかったー!
また機会があったら見に行きたいです、新感線。次にチケットが取れるのはいつになるか分かりませんが!