箱雑記ブログ

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神保町花月『難民先生!』

神保町花月には相変わらず定期的に足を運んではいるのですが、なかなか感想がおいつかないなあ。これの前に見た『ラブ☆ナビ』も個人的にはかなり楽しめたので、いろいろ言いたかったのですが、今更過ぎて書けない(笑)
『難民先生!』も、私はとても好きでした。失敗して絶望してしまった人の再生の物語というのに私は弱い。人を深い絶望から立ち直らせる出来事というのは、当然大変な事件だし、だからこそ大きなパワーが必要なのだと思うのですが、それだけにそこ生まれる物語に私みたいな人間は揺さぶられてしまうのです。
なんてことを私は何かを見るたびに書いている気がするなあ(笑)好きなものが多いのはいいことだ、ということにします。以下感想。



ホームレスの取材をすることになった、駄目な報道記者の目に映る、ホームレスの人達と、その中でも報道記者の目を引く一人の男のお話。
ある事でホームレスとなった教師の過去と現在のストーリーが私はとても好きでした。人生に絶望した人が自分を救ってくれた人たちのために日々を生きている中で、あるきっかけで色んなことが甦ってきて、もう一度絶望したことに向き合うことになって、教師でありたい気持ちを改めて前向きに持とうとする様が本当に素敵です。家城さんが本当にいい芝居するなあと。過去の瞬ちゃんが、命を断とうとするまではとても虚ろな顔をしているのに、寸前でホームレスの人たちに助けられたら、その瞬間から顔を覆って泣き崩れるシーンがあって、私はそのシーンがとにかく好きなのです。2回見て2回ともそこで泣けました。家城さんの芝居に泣かされたと言っても過言ではないかも。
家城さんは本当に汚い格好をしているのに佇まいにどこか品があって、舞台上でもとても存在感があるのです。それが、林さん扮する大谷が彼を取材したいと思う理由にすごく説得力を与えているのだなあ。後から、彼を取材したいと思ったときに大谷が教師だった自分の父の姿を重ねていた、と分かったとき、ああそれでか!と、自分の中ですとんと納まるものがあって、そこもとても好きです。細かいところが行き届いた素敵な脚本だったんですね。


好きといえば、それまでは報道やれなくなるけど取材できないならしょうがないか、とか、上司の命令に逆らえずいじめの現場を渋々撮影しようとしたりとか、終始最後の最後で弱くなるというか、引いてしまう大谷が、どれだけ回りの人や本人にやめろとか無理だとか言われても、「瞬ちゃんにもう一度教師をやってほしい」ということだけは徹底して貫いていたところも好きでした。教師であった彼の父親への気持ちや、教師の道を諦めた大谷本人の、「先生」という存在に対する憧憬がまっすぐに瞬ちゃんに向かっていってたのがばしばしと伝わってきて、本当によかったなあ。
林さんのお芝居って基本的にものすごくパワーがあると思っていたのですが、それが遺憾なく発揮されている!と勝手ながら嬉しく思って見てました。林さんがなりふり構わず何かを訴える芝居をすると、本当に揺さぶられます。*1


彼らを取り巻くキャラクターもとっても個性的且つ魅力的で、見ていて飽きませんでした。ハブさん+中須さんのホームレスのお兄さんコンビは本当に出オチどころでなくいろんな意味で最初から最後までインパクトありっぱなしだったし、鬼奴さんの姉御ぶりも堂に入ってて素敵。ジャングルポケットは3人ともすごく出来る人たちだなあと感心しっぱなしでした。言うまでもなく斎藤さんのお芝居と濃厚な存在感には目を奪われっぱなし。「姉御を抱きたかったら自分の考えを捨てることだ」って、深すぎる。
トレンディエンジェルの斎藤さんも、少年役がちゃんとハマっていたので上手いなあと思ったし、たかしさんも「今更遅いんだよ」はかなり痛々しくてぐっときました。


そういえば、キングコング西野さんのブログで、家城さんが傘をさすシーンに言及しているものがありましたが、実際に見てものすごく共感しました。いろんなことに疲れた様子の瞬ちゃんが、ボロボロの格好で煤けたビニール傘をさす姿は、かなり絵になるなあと惚れ惚れしました。


そんなところです。カリカの芝居のいいところをたくさん見られて嬉しかったし、お話も好きな感じで楽しみました。

*1:オトメメンの「飛魚的走馬灯旋風」の時の、父親に対する「絶対に嫌だ!」のあの芝居とか、思い出してしまう。