箱雑記ブログ

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神保町花月「ヒロイックシンドローム」

千秋楽に足を運んできました。思いのほか楽しめました。何気にあまり神保町花月ではお目にかかれないテーマだったように思います。テーマが嫌いじゃなかったので、最後まで楽しめたような気が。以下感想。



街を荒らす謎の怪人を取り締まるため、政府より作られた匿名戦隊ナゾレンジャーのレッドである赤井(井上マーさん)が、怪人を殺したという理由で逮捕されるところから始まる話。
話としては、最初は赤井が人殺しとして逮捕されて保釈されるところや、逮捕された理由などが述べられていて、世間がヒーローとしての赤井を排斥しようとする現状が垣間見えるのですが、後半から赤井と刑務所で一緒だった3人(猫村・猫本・猫田)が元怪人として現れてからストーリーが一気に展開していった、という印象。前半は、見ていてちょっとテンポが悪いなーとかコンパクトにしてほしいなーとかキャラクターの魅力が伝わらないなーとか偉そうなことを色々と考えていたのですが、3人が再登場してからは、苦悩していたヒーローの前に新しい道筋が現れて、ずっと悶々としていたヒーローが動き出すんですね。そうすると見ているこちらも「動いた!」と思って、ぐっと引き込まれてしまうのです。


個人的にこのお芝居のテーマって、主人公の赤井が自分の存在意義を確かめることだと感じてましたがどうなんでしょう。人々に望まれてヒーローになったはずなのに、自分が居なくても人々は何不自由なく生活していて、それどころか自分を殺人犯だと蔑んでくる。人々のために生み出されたヒーローであるはずなのに、そんな状況を目の当たりにして、さらに自らの驕りに気付いてさらに絶望して、存在意義を見失った赤井が、本当の敵を得たと思ったらその敵すらも被害者であるのを知って、今度こそ何も無くなった。そうなった時、自分がやれる小さなことを見出して、それを必要としてくれる人を得て、自分の存在意義を手にする、という。
私は、映画にしろ芝居にしろ本にしろ、誰かが自分の在るべき場所を模索してそれを得ようと必死になる、というのにものすごく弱いので、そういう意味ではこのお話は結構好きだな、と思いました。誰かに必要とされることって、ものすごく自分を救ってくれるよなあ、と常日頃から思っているので。逆に、誰かが100%必要としてくれてたら、他の誰かに蔑ろにされてもいくらでも耐えられると思うのです。なんとなく、そういうテーマをマーさん扮するレッドの姿に見た気がしたのでした。勝手な感想ではありますが。


また、マーさんがとにかく悩めるヒーロー役にぴったりで、いいなあと思って見てました。尾崎の影が見え隠れするのがその理由だろうか(笑)あと、ヒーローが変身したりポーズを決めたりするのが、マーさんだけ凄まじく様になるので惚れ惚れしました。かっこいい!このまま休日の戦隊モノの枠に持っていってもきっと様になる!と。レッド、というあたりが本当にぴったりなのですね。いや、マーさんならイエローもブルーもばっちり演じてくれると思うのですが、苦悩するレッド、というあたりは大正解だと、何となく思いました。理由は上手く言葉に出来ませんが。やっぱり尾崎の影なのかどうなのか。


ブルーの青山役の阿部さんは、ギロチンがどうのとか、喉笛かき切ってどうのとか、血みどろやグロテスクな表現をさくさく使って話すようなキャラクターでしたが、妙にマッチしてて良かったなあ。阿部さんは普段がああいう人なだけに、どこか生活感のないタイプが逆に様になるのかもしれません。ものすごく冷めたことも言うし、悩む赤井を突き放すようなことも言うけれど、結局は赤井を仲間と認識して付き合っていくところがにくいなーと。ヒーロー3人の温度差って全体通してなかなか面白かったような気がします。
イエローの黄原役の坂本さんは、度をこしたネガティブというヒーローらしからぬ役だったのですが、何ともいえない愛嬌があるように思えたのは、やっぱりあのヒーローらしからぬ体型のせいだろうか(笑)「俺がいなきゃお前らだって何も出来ないと思ってた」と心情を吐露する赤井に、「駄目になったらまた最初から始めればいいじゃない」(台詞うろ覚えです)と言うところがとても好きです。いい台詞だなーといつも思ってました。仲間に対して必死な感じも好きだったし、何気にバランスの取れたヒーロー3人。


元怪人3人も楽しいキャラで。私、この吉田さん扮する猫村さんがとっても好きだったのです。最初の牢獄シーンでの凄みのある笑い方が大好きでした。ああいうのが似合うのは、誰かが言ってた「犯罪者顔」のなせる技か(笑)だから余計に後半のギャップがたまらなかったという話。最終的に猫の全身タイツで猫手でポーズとって「やむをえまい!」ってどういうことだ(笑)
あと、吉田さんは千秋楽で遊びすぎてたのがたまりませんでした。何回か見た中で千秋楽が一番楽しめたのですが、それにしても吉田さんのやりすぎ様ったら。再登場して怪人の存在のからくりを話しているシーンで、それまではナゾレンジャーがやっている極悪非道な所業について「赤ん坊を殺して」云々という本当に残虐な台詞だったのに、千秋楽で「あらゆるプールに片栗粉を入れてとろとろにしてしまうとか」などと言い出して大笑いです。また、それを受けるマーさんは、今までどおり真剣かつ必死な芝居で「そんな酷いことするわけないじゃないか!」と返しているので、それ込みでものすごく不条理な台詞のやり取りになってて可笑しかったなあ(笑)俳句も作ってましたねそういえば。やりすぎだ(笑)
クニさんと徹さんについては、猫の模写が異様に上手いと思ったのですが、私だけでしょうか。冒頭でボールにじゃれるシーン、徹さんがボールで遊んでるのをクニさんが自分もとボールに触ろうとすると徹さんに威嚇されたりしていて、力関係がなんて分かりやすい、と笑ってしまった。千秋楽で、徹さんの口調がものすごく軽くてざっくばらんなヤンキー口調になっていたのが可笑しくてしょうがなかったです(笑)


個人的におっと思ったのは、天狗横山さんの弁護士。スーツ姿でいかにもな雰囲気もさることながら、長い台詞をよどみなく話す様は本当にやり手の弁護士!という説得力いっぱいで、この人は出来る人なのだなあ、と。千秋楽のカーテンコールで、誰よりも早く来て練習をしていることをバラされて慌ててました(笑)
あと、若月の亮さんのフリーダムぶりにやられました。芝居中ですらフリーダム。カーテンコールではよりフリーダム(笑)いつかの公演で徹さんが言っていた「亮ちゃんは楽しいんですけど面白くないんですよ」が頭から離れてくれません(笑)
あとは、首相役のレアレア大浜さんも、恰幅のよさとかちょっとした胡散臭さがいいなあ、と。あと、ホームレス様として再登場したときの、何もないところで何かをつかもうとするような、「明らかにどこかおかしい」様は、何気にぞくぞくするところがありました。


全体通してみれば、ちょっともっさりした部分もあったかもしれませんが、全部見てみたら、私は嫌いじゃなかったです。なんだかんだで相当楽しんで見ることが出来ました。2日目を見に行ったときは、ちょっと不安な点があったのですが、千秋楽を見たときにはずっとよくなってたところも、賛否両論あるところかもしれませんが、私は嫌いじゃないです。
あと、カーテンコールでマーさんが、遊びすぎる吉田さんの話をしているときに「俺だってボケたかった!!」と叫んでいたので、次はのびのび遊んでもらえる役で出てもらいたいかもしれないな、と思いました(笑)