箱雑記ブログ

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NODA・MAP番外公演『THE BEE』

見てきました。日本バージョンをあと1回見に行くのですが、これは日本バージョンよりもロンドンバージョンを見るべきだなあ、と思った次第。以下感想。



上演時間1時間15分くらいかな。あっという間。長いようで短いようで長いようで短かった。
私はNODAMAP歴短いので、そのせいなのかどうなのか、野田さん本人が主演というのを初めて見まして、それが微妙な違和感だったのが我ながら不思議。違和感というか、なんだろうな、なんだろう。言葉で表すの難しいなあ。ただ、あの人が役者としてちょっとえげつないくらいぶっ飛んだ人なのだな、というのが漠然とではありますがものすごく腑に落ちる感じで実感できました。ぶっ飛んだというのは、なんというか、レベル的にというか、レベルという言葉を使うのはいやらしいので嫌なのですが、私の語彙では他に言い様もなく、もどかしい。
だから、あれだけ出来る人があれだけの役をあれだけの覇気でもってあれだけやりきっちゃった、それが違和感だったのかもしれません。適材適所過ぎるというか、配役がストレート過ぎるというか。美味しいようで美味しくないというか、ひねりがないというか。こんなところに拘って違和感とか多分本当にどうでもいい話(笑)


私はある程度野田さんのインタビューやあらすじを予習して見に行ったので、また違った印象でしたが、それでも、冒頭のあのどこか間の抜けた、あまりにもありふれた普通のサラリーマンが、最終的にあれほどの闇を具現化するという事実にまずもって単純に驚かされます。あの落差がとても怖い。
個人と個人の争いに、関わりはあるが何をしたわけでもない人間が犠牲になっていく、という展開に、必然性を感じさせる恐ろしさにまた慄く。
実はもっともっとどぎつくて生々しいことになっているのかと思ったのですが、私が想像するほどでもなく、あれほど救い難い内容でもどこか絵的な美しさがあったりして、それがまた。もっとめためたにやり込めてくれた方が、うわあーとなれてよかったのかも。ところどころオシャレでね、それはそれで怖いのだけれど、私はもっとはっきりした凄惨さを望んでいたのかも。それこそその行為自体を心底憎悪できるくらいの。むしろ憎悪を思っていたより揺さぶられなかったことがすごく怖い。


蜂を撃って怖いものが無くなった男が生まれ変わったようにその世界の王様となって、報復合戦を繰り返して行く様そのものよりも、そうなった男の顔が、それだけで「ああ、駄目だ」と思わされるもので、そこにはもう、当然ながら冒頭で状況に戸惑っていた男の影も形もない。そうか、お話そのものよりも、野田さんの演技に圧倒されたから、私はこんな状態なのだろうか。いや分かりませんが。
結局その男を最終的に蜂の音が圧倒してしまうんですが。話の展開はとても分かりやすいけど、話の結末については未だ消化しきれずにいます。


巨大な紙や投影などの演出技法は見事というしか!本当に、あの人の頭の中にはどれだけのアイデアが埋もれているのか。多少あざといと思わなくもないけれど、何しろ直球で演劇的なのも醍醐味かな、と思うので、堪能しました。


野田さんが主演ではなく、大本の作品であるところのロンドンバージョンを、見なくては駄目かな、と感じました。「ドッグ・ヴィル」を見た後の虚無感みたいなのを感じるもんだと想像していたためか、少しだけ物足りなかった。わが事ながら観客って勝手だなあ。ロンドンバージョンが見られたら、いまいち自分の中で突き動かされきれなかった部分が何なのか分かったらいいな、と。もっと絶望したいしもっと打ちひしがれたい。もっと悪夢を感じたい。見に行くとしたら、時間とお金を見繕うのがまず大変。


余談ですが、シアタートラム初でした。思ったよりも小さくてびっくりでした。見やすかった。終演後、ロビーに高橋克己氏と宇梶剛士氏が談笑なさっていた。高橋さん、服装ラフすぎて笑った。
そういえば、原作が載っている本を注文したのですが、結局間に合わず。今週末また見に行くので、それまでに読んでおきたいのに、まだ届かず。待ち遠しい。